博物館ニューストップページ博物館ニュース037(1999年12月1日発行)化石標本の作り方(037号情報ボックス)

化石標本の作り方【情報ボックス】

地学担当 中尾賢一

野外で採集してきた化石は、そのままではよぶんな岩石がついていたり、岩石の中に埋もれて見えなかったりするのがふつうでよす。標本に仕上げるには、不要な泥・砂や母岩(ぼがん)を化石本体から取り除く作業が必要です。これをクリー二ング(整形、剖出(ぼうしゅつ))とよびます。なお、化石本体が溶(と)けて型だけが残っている場合は別な作業が必要になリますが、ここではそれは取り上げません。

クリー二ングという作業

標本の良し悪しを決定する大事な作業です。また、多少のテクニックと手先の器用さと根気が必要な、緊張感のある楽しい作業でもあります。母石の硬さ、化石のもろさなどによって、いろいろな道具や手法を使い分けたり、自分なりに工夫を加えたりする必要があります。

基本的な道具とその使い方

大学などでは高価な機械や各種の薬品を使って行うこともありますが、ここでは一般の家庭でもできる基本的な方法を紹介しましょう(図1)。

図1クリーニングに使う道具

図1クリーニングに使う道具

●化石を砂袋(A)の上に置き、小型ハンマ一(B)とタガネ(小型の丸タガネと平タガネ:CとD)で、化石本体を傷つけないように、母岩を少しずつ割っていきます。タガネは化石本体に対して垂直に近い角度であてます(図2)。母岩が柔らかい場合は、千枚通し(E)の針先や片側を落としたぺン先(F)などでつついて落としてもよいでしょう。筆(G)やハケで岩石片や砂粒を払いながら行います。小型の箱の中で行うと、岩石片や砂粒の飛散(ひさん)が防げます。

●化石を水につけて使い古しの歯ブラシ(H)で磨きます。周囲の砂・泥が柔らかく、化石がしっかりしている場合は、これだけでもかなりきれいになります。

●二ッパー(l)でよけいなところをはさんで落とします。

●母岩が全体的にもろくなっている場合には、水に溶いた木土用ボンド(J)(場合により薄めた二スまたは液状瞬間接着剤(しゅんかんせっちゃくざい))をしみこませて補強します。

割れた殻の接着には、ゼリー状瞬間接着剤(K)が便利です。硬い母岩が大きく割れた場合には、工キポシ系接着剤(M)を使います。液状瞬間接着剤(L)は補強に向いています。

【コツ】

●化石に直語力が加わらないようにします。特にタガネや二ッパーは、力のかかる方向を予測しながら使うようにしましょう。

●あせらないこと、時聞をたっぷりかけることが大切です。時間的・精神的に余裕のないときにはやらない方がいいこともあります。

●化石のもろさを見極(みきわめ)めましょう。もろいものは慎重にすすめないと壊してしまいます。「危ないな」と思ったら、多少めんどうでも補強してからとりかかるか、そこでやめましょう。

●仕上がりの形を考えながらすすめましょう。不用意にやると、たとえば巻貝のトゲを折ったりすることがあります。

●いろいろな方法を試してみましょう。現在の方法が最良とは限りません。

●化石にひびが入ったらすぐに補強しましょう。液状瞬間接着剤が便利です。

●殻の薄い二枚貝化石などは、バラバラにしたものを組み立て直すよリ、補強しながらまわりの母岩を落としていった方がよいものに仕上がります。

図1のハンマーとタガネは化石クリ二ング専用品ですが、ハンマーは木工用のもの、タガネは小型の般的なものでもよいでしょう。ここにあげた道具は一般のホームセンターや文具店で手に入りますが、理科機器販売店ではクリー二ングの専用品を入手することもできます。

図2タガネのあて方

図2タガネのあて方

カテゴリー

ページトップに戻る