ナルトサワギク【表紙】
植物担当 小川誠
ナルトサワギクは1976年に鳴門市瀬戸町で見つかった帰化植物です。埋立地の緑化の種子に混じって広がったものですが、花の特徴からサワギク属の一種であることがわかりましたので、ナルトサワギクと名付けられました。しかし、サワギク属は世界で2000種を超えると言われており、その学名はわからないママになっていました。学名がわからないと、この植物がもともとどこに生えていて、どんな植物で、どのように広がっているのかといった正体を調べることができません。
その後、ナルトサワギクの学名が幾度(いくど)か発表されましたが、どれも確証にかけていました。ところが、1996年に、徳島県立博物館に収蔵されていたアルゼンチン産の標本の中にナルトサワギクと同じものが見いだされました。そのラベルにはSenesio madagascariensis Poiret という学名が書かれていました。また、徳島県植物研究会の会長である木下覚氏が、アメリカのスミソニアン博物館にナルトサワギクの標本を送り同定を依頼していたところ、1997年に同博物館のHarold Robinson博士からその結果が戻ってきて、それも S.madagascariensis と同定されていました。さらに同博物館に滞在中の富山市科学文化センターの太田道人氏により、多くの情報が寄せられました。こうして、発見から20年以上たって、ナルトサワギクの学名がS.madagascariensisということが明らかとなり、インターネットなどを通じてその情報が集まるようになりました。
毎年、たくさんの生き物が外国から入ってきますが、その正体をさぐるのはとても難しいことなのです。