博物館ニューストップページ博物館ニュース129(2022年12月1日発行)勝浦町の恐竜化石発掘現場(129号野外博物館)

勝浦町の恐竜化石発掘現場【野外博物館】

地学担当 辻野泰之

徳島県立博物館は、2018年4月の勝浦町の恐竜化石含有層の発見を機に、継続的に恐竜などの脊椎せきつい)動物化石の発掘調査を実施しています。勝浦町の発掘現場は、現在、化石の盗掘や事故防止の観点から非公開にしており、関係者以外立ち入ることはできません。そのため、現在の発掘現場の状況について、ここで紹介したいと思います。

勝浦町の発掘現場は、急峻(きゅうしゅん)な山の斜面にあります(図1)。この斜面には、物部川層群立川層とよばれる約1億3000万年前(白亜紀前期)の地層が露出しています。地層は、60°~ 70°の高角度で傾斜しており、礫岩(れきがん)や砂岩(さがん)、泥岩(でいがん)といった岩石で構成されています。立川層の中で化石を多く含む部分は、おもに泥岩や泥質砂岩です。この部分に含まれる化石の多くは、シダ植物や裸子植物などの植物化石ですが、その一部に淡水生貝類(イシガイ類やタニシ類など)の化石を多く含む層があります。淡水生貝類化石にまじって、恐竜やワニ、カメといった脊椎動物化石が含まれることから、この層を恐竜化石含有層とよび、発掘を進めています。

図1勝浦町の恐竜化石発掘現場の様子(2021年12月6日撮影)

図1勝浦町の恐竜化石発掘現場の様子(2021年12月6日撮影)

2018 ~ 2019年度までは、斜面の中腹に露出した恐竜化石含有層を掘削していましたが、落石の危険もあるため、2020年度からは、重機を使い、斜面上部から地層を掘削して発掘を進めています。発掘現場には、トラックなどの車両が往来できる道をつけることが難しいため、化石を含む岩石を索道(さくどう)という簡易ロープウェーで運搬しています(図2)。

図2 索道を使った岩石の運搬作業 (2021年10月26日撮影)

図2 索道を使った岩石の運搬作業(2021年10月26日撮影)

2021年度の発掘調査では、斜面上部において恐竜化石含有層を広く露出させることができ、安全かつ効率的に発掘ができるようになりました(図3)。その結果、2021年度は、230点を超える脊椎動物化石を発見することができました。その中には、イグアノドン類の尾椎(びつい)(尻尾の骨)や歯などの恐竜化石も含まれていました(図4)。
イグアノドン類の尾椎は、保存状態が良く、ほぼ完全な形を残しています。今後の発掘調査次第では、イグアノドン類の尾椎の“持ち主”の別の骨が発見される可能性も十分にありますので、今後の発掘に期待が膨ふくらみます。

図3 恐竜化石含有層を露出させ、発掘している様子 (2021年12月14日撮影)

図3 恐竜化石含有層を露出させ、発掘している様子
(2021年12月14日撮影)

図4 2021年度の発掘調査で発見されたイグアノドン類の歯と尾椎。 尾椎の大きさから、全長は6~7mと推定される。

図4 2021年度の発掘調査で発見されたイグアノドン類の歯と尾椎。
尾椎の大きさから、全長は6~7mと推定される。

カテゴリー

ページトップに戻る