出発進行! JR池谷駅から遺跡散歩【歴史散歩】
考古担当 植地岳彦
徳島県内には多くの遺跡が残っており、中には整備されて見学できる史跡(しせき)公園や、石室(せきしつ)内に入ることができる古墳(こふん)もあります。遺跡や古墳に行く場合、徳島では自動車を使うことが大半ですが、今回はJR池谷駅を出発点として、徒歩で古墳などを探訪できる「遺跡散歩」を紹介します。
池谷駅を出発
JR池谷駅は、鳴門市大麻町(おおあさちょう)池谷にあり、JR高徳線とJR鳴門線の2路線が乗り入れています。池谷駅の周辺には、6基の弥生時代や古墳時代の墳墓(ふんぼ)が現在も残っています。これらの墳墓を徒歩で順番にめぐっても距離は3kmもなく、高低差も小さいので、気軽に遺跡散歩を楽しむことができます。
天河別神社古墳群(あまのかわわけじんじゃこふんぐん)
池谷駅から西へ徒歩約10分、天河別神社本殿の北西から南西に、10基以上の古墳からなる天河別神社古墳群があります。1・2号墳は円墳(えんぷん)、3号墳は前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)で、4号墳は前方後円墳か円墳と考えられています。1~4号墳までは現存しますが、その他の古墳は現地に行っても詳細不明です。古墳群の中でもっとも古いものは、中国製青銅鏡(せいどうきょう)が出土した4号墳か5号墳で、古墳時代前期前半(4世紀前半)に造られたと考えられています。
萩原墳墓群(はぎわらふんぼぐん)
天河別神社古墳群から西へ徒歩約10分で、萩原墳墓群に到着します。現存する萩原2号墓は弥生時代終末期(3世紀半ば)の墳丘墓(ふんきゅうぼ)で、急な斜面を少し登った場所にあります。墳丘を上から見ると、石を積み上げた直径20mの円形の墳丘に、長さ5.6mの突出部(とっしゅつぶ)がつく前方後円墳に近い形です。2号墓の埋葬施設(まいそうしせつ)は、積石木槨積(つみいしもっかく)と呼ばれ、最古級の古墳の埋葬施設に、影響を与えた可能性があると考えられています。
宝幢寺古墳(ほうどうじこふん)
萩原墳墓群から今度は東に向いておよそ15分歩くと、全長47mの前方後円墳、宝幢寺古墳があります。後円部に埋葬施設があったと考えられ、前方部西側の斜面からは、円筒埴輪(えんとうはにわ)や朝顔形埴輪(あさがおがたはにわ)が出土しました。古墳時代前期後半(4世紀後半)に造られたと考えられています。
終点、池谷駅
宝幢寺古墳から徒歩約10分で、池谷駅に戻ります。池谷駅から徒歩で十数分の範囲内に、弥生時代終末期から古墳時代前期後半まで、連続して墳墓が作られたことが注目されます。弥生から古墳時代へと時代が移り変わっていく時代の様子について、読み解いていくための重要なヒントがたくさん残るエリアと言えます。