博物館ニューストップページ博物館ニュース009(1993年1月10日発行)シーボルト「日本動物誌」(009号館蔵品紹介)

シーボルト「日本動物誌」【館蔵品紹介】

館蔵品展出品資料

動物担当 佐藤陽一

「日本動物誌」は江戸時代の終わりごろ(1823年)、医師として長崎出島のオランダ商館にやってきたドイツ人シーボルトが、日本滞在中に集めたさまざまな動物標本をもとにまとめた大著です。この本は当時のヨ一口ッパ博物学の代表的な作品であると同時に、日本の動物を本格的にヨーロッパに紹介した最初のものとしてよく知られています。


内容は捕乳類、鳥類、両生・は虫類、魚類および甲殻類(工ビ・力二類)で、それらの精巧で美しい図版と分類学的記述からなります。多くの新種の記載が舎まれており、今では絶滅してしまった二ホンオオカミ、生きている化石といわれるオオサンショウウオ、私たちになじみ深いマダイなどはその例です。なお、軟体動物や昆虫類など他の無脊椎動物については、残念ながら出版されませんでした。

シーボルト自身による学名・和名・ハングルの 対照表

シーボルト自身による学名・和名・ハングルの 対照表


この本の執筆のほとんどは専門の分類学研究者によってなされており、シーボルト自身の執筆はごくわずかです。両生・爬虫類と甲殻類について、日本滞在中に見聞したことや動物の日本名などについて記述しただけです。シーボルト自身は動植物についてかなりの見識をもっていたたにもかかわらず、それをあえて専門の研究者にゆだねたことは、評価にあたいするといえるでしょう。

ニホンオオカミ

ニホンオオカミ


この本の価値は、たんに歴史的、美術的なものにとどまりません。もっとも重要なことは、きちんとした分類学的な手続きにしたがって書かれているということです。そのため現代の動物分類の研究者にとっても有用です。さらに、執筆のもとになった標本の多くは、今でもオランダのライデン博物館や大英自然史博物館にきちんと保管されており、150年聞にわたって研究に利用されているのです。

 

マダイ

マダイ

 

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