博物館ニューストップページ博物館ニュース029(1997年12月1日発行)Q.遺跡や遺物の年代はどうやって(029号QandA)

Q.遺跡や遺物の年代はどうやって決めるのですか?【レファレンスQ&A】

考古・保存科学担当 魚島純一

 

 

Q.遺跡や遺物の年代はどうやって決めるのですか?

 

 

A 考古学は過去の人類が残した道具や建物などの遺物や遺構などから、過去の生活のようすや文化を復元する学問です。考古学において遺跡や遺物の年代を決めることは、もっとも重要なことだといえます。遺跡や遺物の年代の決め方には、大きく分けて二つの方法があります。一つは相対年代、もう一つは絶対年代を決める方法です。

相対年代は、遺物Aと遺物Bをくらべてどちらがより古いか、新しいかという新日関係を探り、その関係をつなげていくことによってものの年代を決めていくものです。

相対年代を決定する方法の一つが、層位(そうい)学です。これは、より下の土層から出土したものの方がその上の層から出土したものよりも古いという原理を用いて、遺物や遺構の新旧関係を決める方法です。
別の方法が、形や文様(もんよう)から判断する型式学です。たとえば、土器の形や文様はある時期、ある地域では、非常に似通った特徴をもつことがあります。これを考古学では型式と呼んでいます。そして形や文様の変化などから、どの型式が古くて、どれが新しいかを決めるのが型式学です。型式の古いものから新しいものへと分類して並べていきます。これを編年といいます。編年は、遺物の年代をはかるためのものさしとなります。

実際の発掘調査では、こうした手段を用いて遺構や遺物の年代を確かめます。発掘調査で出土した遺物は、どの層から出土したかがきちんと記録されていますので、これらを詳しく調べて、層位学的、型式学的方法で研究され、年代が決められるのです。この時に決められる年代は、「◯◯時代後期」や、土器などの遺物の型式名を使って「△△△第1型式」などと呼ばれます。

一方、絶対年代は西暦何年とか、今から何千何百年前というような定まった年代のことをいいます。絶対年代の決め方にも、いくつかの方法があります。

まず、遺物にそれが作られた年代などが記されたものがあった場合には、それによって遺物の年代をズバリ知ることができます。お経を入れた経筒などに書かれた年号や、木簡などの年号が代表的なものです。ただし気を付けなくてはいけないのは、遺物に書かれた年号などは、あくまでもそれが作られた年代であって、埋められたのはずっと後になってからの場合もあるということです。

その他に、自然科学的な方法によって絶対年代を決定する方法がいくつかあります。炭素の中には、非常に長い、一定した速度で壊れて別の元素にかわっていくものがあリます。これをC14(炭素14)と呼んでいます。この炭素の性質を利用して、炭になってしまった遺物や、ぞれが含まれた地層の年代を測定することができます(C14年代測定法)。

また、最近注目を集めている方法に、樹木の年輪を調べることで、その樹木が伐採された年代をはかる方法があります(年輪年代法)。この方法は、出土する建物の柱などの建築資材や木製品、お寺などの仏像などわが国に多く残った木でできた遺物から年代を判定することができ、考古学や美術史の分野から注目されています。

ただしこの場合も、かなリ大きな木材でないと測定できなかったり、測定でわかるのはあくまでも木材の伐採年代であるという点を忘れてはいけません。
いずれの方法でも、それだけで完全というものはあリません。お互いがたリない部分を補い合う関係にあるのです。実際には確実な年代を決めるためには、二つ以上の方法で年代を測定する必要があります。
考古学では、このようなさまざまな方法を用いて遺物や遺跡の年代を決め、それをもとにその時代の生活のようすなどを探っています。

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