博物館ニューストップページ博物館ニュース037(1999年12月1日発行)故阿部近一氏の文献類が寄贈されました(037号速報)

故阿部近一氏の文献類が寄贈されました【速報】

植物担当 小川誠

タヌキノショクダイやジンリョウリユリの発見者として有名な阿部近一(あべちかいち)氏(図1)は、長年にわたリ徳島県の植物相について研究してこられました。その成果は、1990年に徳島県植物誌としてまとめられ、現在でも各種の調査研究の基礎資料となっています。また、氏は陸産貝の研究家としても知られており、自らが発見・記載した新種もあります。さらに、徳島県文化財審議委員もつとめられたり、脊椎(せきつい)動物の調査を行うなど、徳島県の生物相研究の第一人者でした。1993年に他界されましたが、収集した標本は徳島県立博物館に寄贈され、阿部コレクションとして整理を進めているところです。

図1若かりし頃の阿部近一氏(右)。左は陸産貝の調査で来県した黒田徳米博博士(昭和18年撮影)

図1若かりし頃の阿部近一氏(右)。左は陸産貝の調査で来県した黒田徳米博博士(昭和18年撮影)

このたび、ご遺族の皆さまから、阿部近一氏が所有されていた文献類などの資料の寄贈を受けました。正確な点数はわかりませんが、段ボール箱で100箱近くに及ぶ大量の資料です。資料の概略は動植物図鑑などの図書、学会誌や研究会誌などの雑誌、ネガ、紙焼き、スライドなどの写真類、手紙や原稿などです。文献類のなかには現在では入手できないものも多くあります。さらに、調査報告書や論文の原稿類もよく整理されて残っています。図2は氏が発見したタヌキノショクダイのスケッチですが、鉛筆書きのスケッチから細かいところまで観察していることがうかがえます。徳島県植物誌に記録された植物は3000種類を越えますが、そのすべてが明らかになっているわけではありません。氏の標本を整理していると、なかには迷いながら同定したものもたくさんあることがわかります。そうした場合、同定に際して参照した文献や植物研究者との手紙のやりとりから、どのような根拠で同定したのか推測できるケースがあります。これらの資料は、氏の収集した標本や発表した文献を補完するもので、徳島県の生物相を明らかにする上で欠かせない貴重なものといえます。

図2タヌキノショクダイのスケッチ。 右:鉛筆書き、左:墨入れしたもの

図2タヌキノショクダイのスケッチ。 右:鉛筆書き、左:墨入れしたもの

貴重な資料を快くご寄贈いただいた阿部永氏をはじめとするご遺族の皆さまに感謝いたします。
 

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