豊北町立土井ケ浜遺跡人類学ミユージアム【博物館紹介】
普及係 結城孝典
図 1 博物館正面とゴホウ ラのモ二ュメント
土井ヶ浜遺跡は山口県の西北端に位置しています。周辺は小高い丘と田園に固まれたのどかな地域で、すぐ西側には穏やかで美しい響灘(ひびきなだ)が広がっています。ここは弥生時代の集団墓地としてその名を全国に知られた遺跡です。これまで約300体の人骨(土井ヶ浜弥生人)が出土しており、日本人のルーツや現代人の成り立ちを考えていく上で貴重な資料を提供してくれています。また、ゴホウラなど南西諸島(奄美や沖縄)特産の貝で作った装身異類が出土しており、当時の人々の交流の状況や精神生活を知る上で注目されています。
遺跡はその重要性から1962年に国指定史跡になり、1993年には「土井ヶ浜弥生パーク」が開設されました。ここにはいろいろな施設があり、「土井ヶ浜遺跡人類学ミュージアム」が中核施設となっています。
展示は人類学-考古学の成果をもとに構成されています。出土遺物、ジオラマ、ビデオ映像による解説、グラフィックパネル、イラストなどを駆使して、文字情報をできるだけ少なくし、見ただけでわかるよう工夫がなされています。また、自分の顔を縄文人、弥生人、未来人に変形させるコーナー(プリクラのようなもの)、貝による土器の模様づけ、貝輪の装着、自分が弥生人タイプか縄文人タイプかを判断してくれるコーナーなど、実際に体験して楽しめるよう趣向がこらされています。展示室のとなりの部屋は「弥生シアター」です。250インチ大画面で「遥かなる弥生-土井ヶ浜幻想-」というイメージビデオ(約10分)が30分ごとに上映されています。別棟には、「土井ヶ浜ドーム」があります。これは“土井ヶ浜弥生人”の人骨の密度が特に高かった部分をドームでおおって造られた施設で、目玉的な存在です。1990年から公開されています。薄暗いドーム内には、約80体の埋葬された人骨が、出土した状況そのままにレプリ力で再現されています。興味深いことに、人骨はほとんどすべて頭を南東にして、顔が北西(海の方向)を向くように葬られています。
図2 土井ヶ浜ドーム外観
図3 土井ヶ浜ドーム内部の埋葬復元状況。
他にもパーク内には、軽食や地域の特産品を用意した休息所「ほねやすめ」、復元された竪穴(たてあな)式住居、赤米を栽培する水田などがあります。
遺跡に立ち、“土井ヶ浜弥生人”の骨と向き合い、彼らと同じように、青く澄んだ海のはるか西方を見つめると、遠い過去を身近に感じさせてくれます。皆さんにもいつかぜひ訪れていただきたい場所です。