Q.昆虫の標本の作り方を教えて下さい【レファレンスQ&A】
A「昆虫(こんちゅう)の標本(ひょうほん)づくり」で一番大切なことは、ただただ、よく乾(かわ)かすということです。その付録(ふろく)として、形をきれいに整えるかどうか、ということですので、最初からあんなにきれいにはできないとあきらめる必要はありません。
昔は、昆虫採集(さいしゅう)セットなるものが売られていて、中には注射(ちゅうしゃ)器と、殺虫剤(さっちゅうざい)、昆虫針(こんちゅうばり)などが入っていて、いかにもそれを使うときれいな標本が作れそうに見えたものです。しかし、このようなセットは、昆虫の標本作りには全く必要ありませんし、逆に害の方が大きいのです。というのは、昆虫の標本作りのもっとも大事なことは、よく乾燥(かんそう)させるということですから、水分をできるだけ含まないようにしなければなりません。ところが、あのようなセットに入っている注射液(ちゅうしゃえき)は、単なる色のついた水と考えた方がいいのです。虫を殺せるのであれば、危険(きけん)な薬ということですから、子供たちに売れるわけがありません。子供が力ブ卜ムシなどに、たっぷりと水を注射すれば、たしかに死ぬには死ぬでしょうが、ものすごく苦しみますし、中には水がたっぷり入っていますから、すぐに腐(くさ)ってきて、ものすごい臭(にお)いがするようになります。ですから、あのようなセットはまったく必要(ひつよう)ありません。
昆虫針を指す位置
では、虫を採(と)ったらどうしたらいいのでしょう?標本にするためには、その虫を殺さないといけません。注射がないのに、どうして殺すのですかという質問も多いのですが、一番簡単(かんたん)な方法は、小さなビニール袋に虫を入れます。その袋をタッパーに入れ、冷凍庫(れいとうこ)で凍(こお)らすのです。そうして1~2日凍らすことで、虫は死んでしまいます。なお、ビニール袋には、マジックなどで、どこでいつ、誰が採集したかを書いておきます。
冷凍庫から出して、柔らかくなったら、虫に昆虫用の針を刺して、乾燥させるわけですが、このときの昆虫針は少し特殊で、理科器具店(りかきぐでん)でないと売っていないことが多いのです。文具店(ぶんぐてん)などて、売っているのは少し短くて、標本が乾いたときに持ちにくく、こわしやすいので注意しましょう。また、標本の横には採集日(さいしゅうび)や採集地(さいしゅうち)、採集者(さいしゅうしゃ)などを書いた小さな紙を忘れずにつけておきます。
虫を乾燥させるときに大切なのは、ゴキブリなどに食べられないようにすることです。ですから、お父さんやお母さんの洋服が入っていたような、大きな紙の箱を準備(じゅんび)して、そのまわりに防虫剤(ぼうちゅうざい)を入れてから、乾燥させる虫を入れます。そして箱のふたをして、できるだけ乾燥した部屋でじっくり乾燥させましょう。クーラーの入っている部屋が一番いいですね。一ヶ月くらい乾燥させるようにすると、いつまでも標本は残りますよ。標本を長く残そうとすると、標本箱もしっかりしたものを選ばないといけませんが、学校の宿題ならお菓子の箱などを利用するだけで十分です。