Q.考古資料の3D画像は、どのように作るのでしょうか?【レファレンスQ&A】
考古担当 植地岳彦
A 徳島県立博物館では、デジタルアーカイブとして銅鐸(どうたく)や埴輪(はにわ)輪などの3D画像をインターネットで公開しています。このような画像は三次元レーザースキャナーを用いた計測や、写真測量を応用して作成します。三次元レーザースキャナーを使
用すると、高精細な3D画像を作成することができますが、装置が高額などの問題もあり、もっぱら専門業者に三次元レーザー計測と3D画像作成を委託しています。
写真測量を応用した作成では、MVS(Multi-ViewStereo) / SfM(Structure from Motion)と呼ばれる複数の画像から3D形状を復元する技術を用いることが増えています。必要なものは市販のデジタルカメラ、パソコン、比較的安価な専用ソフトなのですが、それだけでもある程度の水準の3D画像を作成することができるため、考古学や埋蔵文化財の調査や記録、普及の分野で導入が進んでいます。
筆者も当館の考古資料について、MVS / SfMによる3D画像作成を試みています。今回は、若杉山辰砂採掘遺跡(わかすぎやましんしゃさいくついせき)で出土した朱(しゅ)の生産に用いる「石臼」を、3D画像にしてみました。作り方は大きく3段階に分かれます。
- 資料の写真を撮ります。一枚撮ったら、画像の一部が重なるようにカメラを少しだけ移動させて、次の写真をとります。これを繰り返し、資料全周囲から撮影します。
- 画像データをソフトで処理します。数時間かかる場合もあります。
- 作成した3D画像は、ソフトによっては三次元データをもったPDF形式で保存できます。この場合、無料ソフトで3D画像を閲覧することができ、資料断面を表示することもできます。
図1 石臼を周囲から写真撮影します。
図2 石の細かい凹凸を、想像以上に再現しています。
図3 3D画像であるため、石臼の中央部分が丸くくぼんでいる様子を断面図で表示することができます。
今後は、より多くの3D画像を作成し、ホームページなどで公開していきたいと考えています。