博物館ニューストップページ博物館ニュース030(1998年3月25日発行)Q.博物館に展示してある動物の剥製標本は・・・(030号QandA)

Q.博物館に展示してある動物の剥製標本はどうやって集めるのですか?【レファレンスQ&A】

動物担当 佐藤陽一

A 博物館の展示室には鳥や獣の剥製(はくせい)標本がたくさん展示してあります(図1)。これらは展示を構成する上で、なくてはならないものなのですが、ご覧になった方から、「博物館だからといって貴重な生きものを展示のために採るなんて…」とか、「標本にするために殺されてかわいそう」といったご意見をいただくことがあります。しかし、これらは誤解によるものです。博物館の活動についてご理解いただくために、このことについてお話ししましょう。

図 1 博物館常設展示室の 「山地の自然とくらし」のコーナーに展示された剥製類。

図 1 博物館常設展示室の 「山地の自然とくらし」のコーナーに展示された剥製類。

とくに徳島県産の鳥獣について言えることですが、展示あるいは研究用の標本にするために、野生のものを捕獲することは、まったくといってよいほどありません。では、どうやって集めたかというと、ほとんどは野外で死亡していたものを、皆さんに見つけていただき、博物館へご寄贈いただいたものなのです。それらは不幸にも、不慮の事故や病気で死んだと思われるものがほとんどです。
例えば、小型の鳥ではガラス窓に衝突して死亡したものが多くみられます。渡リ鳥のア力工リヒレアシシギのように、夜の窓明かりに誘われて、1度に10羽近くも落ちたことがあります。大型の鳥では、クマタ力のように、翼を広げると端から端までが1.5mもあるために、2本の高圧電線に翼端が同時に接触してしまい、一瞬にして感電死したものもあります(図2)。

図 2クマタカ(徳島市八多町産)の剥製。高圧ケーブルに接触したため、両翼の付け根に穴が開いているが、見えないように翼を閉じたポーズにしている。

図 2クマタカ(徳島市八多町産)の剥製。高圧ケーブルに接触したため、両翼の付け根に穴が開いているが、見えないように翼を閉じたポーズにしている。


哺乳類で圧倒的に多いのは、交通事故によるものです。県内では毎年100人近くもの人が交通事故で亡くなるくらいですから、獣の死亡もいかに多いかは、容易に想像できるでしょう。興味深いのは、イタチのように比較的小型の獣の場合、目立った外傷がなく、骨格にもほとんど損傷が見られない場合が多いことです。これは体重が軽いために、衝突したときに飛ばされやすいためと思われます。逆に、タヌキくらいの大きさになると、ぶつかったときの衝撃が大きいためか、損傷が目立ちます。そんなわけで、良好な標本はイタチで得られやすく、タヌキで得にくい傾向があります。
また、全般的に言えることですが、ワシ・タ力類や二ホン力モシ力のように、ある程度珍しい動物の方が、人目を引きやすいためか、どちらかというと集まりやすいのです(それでもせいぜい年に数個体にすぎませんが)。それに対し、ヒヨドリや力ラス、ネズミ、コウモリ類などの小~中型の普通種が意外と集まりにくいのです。
今度博物館の展示をご覧になったら、鳥や獣たちが博物館へやってくることになった理由(わけ)に思いをはせていただければ幸いです。また、今後とも皆さんのご協力をよろしくお願いします。

カテゴリー

ページトップに戻る