博物館ニューストップページ博物館ニュース135(2024年6月15日発行)ヨシ原の ユニークなクモたち(135号情報ボックス)

ヨシ原の ユニークなクモたち

動物担当 鈴木佑弥

吉野川や勝浦川の河口域(かこういき)には、イネ科のヨシなどが生い茂った、いわゆる「ヨシ原」が広がっています(図1)。ヨシ原とその周辺の泥干潟(どろひがたには、カニや貝類、魚類、鳥類をはじめとするさまざまな生き物がみられます。そんなヨシ原が、クモの宝庫でもあるということを皆さんはご存(ぞ)じでしょうか? 2023年に吉野川・勝浦川河口域で実施した調査では、県内では見つかっていなかった種(しゅ)を含む、50種あまりのクモが発見されました。今回は、その中からヨシ原を代表するクモをいくつか紹介します。

図1 吉野川河口域のヨシ原

 

カコウコモリグモ(図2・3)は、その名のとおり河口付近のヨシ原に生息するクモです。他のコモリグモ類と同様、メスは腹部の先に卵(らん)のう(卵の袋)をつけて保護(ほご)します。このクモは塩水(しおみず)のある場所を好むため、一般的には河口域以外からは見つかりません。しかし、吉野川の汽水域(きすいいき)(海水と淡水が混ざる水域))は河口から約14.5kmもの範囲に及ぶことから、本種はその範囲に広く生息している可能性があります。

 

図 2 カコウコモリグモ(メス)と卵のう(矢印)

図 3 泥の上を歩くカコウコモリグモ(メス)

ヨシシャコグモ(図4)は、名前に「ヨシ」とつくように、ヨシ原とその周辺の草地にみられるクモです。このクモは、細長い体と脚(あし)、枯(か)れ草のような色合いが特徴的であり、葉や茎(くき)に体を沿(そ)わせるようにして身を隠します。本種(ほんしゅ)は吉野川や勝浦川の河口では個体数が多いものの、中流域や上流域の河原ではほとんど見つかりません。ヨシ原のクモたちについては、今後さらに詳しく調査していく予定です。

図4枯れ草に身を隠すヨシシャコグモ(メス)

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