ハボウキガイ類 Pinna sp. の密集層(画面の左右31cm)【表紙】
地学担当 中尾 賢一
ハボウキガイ類は、細長い三角形をした二枚貝です。殻頂部(最もとがったところ)を下にして、海底に突きささったような姿勢で生息しています。現生種のハボウキガイ(Pinna bicolor)は房総半島以南の浅海に分布しています。
この化石は相生町内山の南海層群(中生代白亜紀前期アプチアン:約1億2000万年前)から産出したものです。多くの個体(約10個体)が折り重なるようにして密集しています。よく見ると、殻の方向が揃っていて、生きていたときの姿勢を示していません。ここに見る個体は、おそらく嵐などによって一度に海底から掘り出され、多少運搬され、その直後に砂や泥に埋められて化石となったものなのでしょう。
相生町内山の南海層群からは多くの種類の貝化石が産出します。ハボウキガイ類はその中で最も目立つものの一つです。しかし大部分は小さな破片で、このように個体の形や産状がわかる標本は少数です。
ハボウキガイ類の化石は、県内では他に勝浦町広安(白亜紀前期バレミアン:約1億3000万年前、羽ノ浦層)などからも産出します。