博物館ニューストップページ博物館ニュース048(2002年9月13日発行)海岸でクルミを拾う(048号野外博物館)

海岸でクルミを拾う【野外博物館】

植物担当 茨木靖

ちょっと不思議に思えますが、海岸を歩いているとクルミを見つけることがよくあリます。ずっと浜辺で暮らしている人の中には「クルミは海でとれるものとばかり思っていた」と言う人があるくらいなのです。当館にも海岸で漂着物さがしをしたときに拾ったクルミが50個ほどあります。

それにしてもこのクルミたち、いったいどうして海岸にあるのでしょうか?クルミと言ったら普通は山や野原に生えているはずなのに不思議ですね?クルミのなかまには、サワグルミ、ノグルミ、オニグルミなどがありますが、海岸で拾えるのは主にオ二グルミです。オニグルミは高さ10mにもなる大きな木で、北海道から九州にかけて分布しています。沢沿いなどにもよく生えているため、果実は川に落ちてついには海に流れ着くのだと考えられます。
海岸で拾ったクルミをよく見ると穴が空いているのがあります。どうやら何かが囓(かじ)ったようですが、海岸に漂着するクルミの穴の空き方には大きく3つくらいのパターンがあることが知られています。

まず最初は、誰かが強引に囓って割ったような物です。クルミを食べる動物の代表と言えばなんと言ってもリスのなかまでしょう。リスは大きな口でクルミをくわえて歯で傷を付けて二つに割ります。すると図1のような割れ方になるわけです。ですから、図1のクルミはリスが割って中身を食べたものと考えられます。

図1 リスが割った物

図1 リスが割った物

次は、左右からきれいに丸い穴が空いている物。これは、小さな口で力リ力リと穴を開けて中身を食べる動物がつけたものです。おそらくネズミのなかまの仕業(しわざ)でしょう。これはまだ海岸で拾ったことはありませんが、山の中で拾われた物は確かにそうなっていました(図2)。

図2 ネズミカ食べた物

図2 ネズミカ食べた物

この他に、特に囓られたわけでもないのに、割れている物もあります(図3)。これを割ったのはさて誰でしょう?答えは他ならぬクルミ自身です。つまりこのクルミはめでたく芽が出て二つに割れたと言うわけです。

図3 自然に芽が出て割れた物

図3 自然に芽が出て割れた物

そうゆう目でもう一度見直してみると、海岸で拾ったクルミのうちリスが割ったと思われる物は2つ。芽が出て割れたと思われる物が5つありました。それともう一つ変な割れ方のクルミがありました(図4)。リスにしては変な囓り方ですし、ネズミにしては穴が大きいし、つながっています。いったい誰が囓ったのでしょう??

図4 誰が食べたか解らない物

図4 誰が食べたか解らない物

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