博物館ニューストップページ博物館ニュース050(2003年3月25日発行)Q, ハチは危険な昆虫ですか?(050号QandA)

ハチは危険な昆虫ですか?【レファレンスQandA】

動物担当 大原賢二

皆さんはハチに刺されたことがありますか?

オオスズメ パチの女王

オオスズメ パチの女王

人を刺す“ハチ”といえば、ミツバチなどもはいりますが、たいていの人はまず“アシナガバチ”と“スズメバチ”を思い浮かべることでしょう。

しかしこう呼んでも一つの種をさすのではありません。分類学的には、スズメバチ科のなかのスズメバチ亜科とアシナガバチ亜科に属する一群です。徳島県で見られるアシナガバチ類とスズメバチ類はそれぞれ5種くらいずつなかまがいます。人家近くではアシナガバチ類の巣を見かけることが多く、スズメバチ類の巣は、人家にもよく巣を作るキイロスズメバチやコガタスズメバチをのぞけばそう簡単に見ることはないでしょう。

これらのハチは、春先に女王が1匹で巣を作り始め、女王の娘である働きバチを育てます。働きバチが生まれた後は女王は巣から離れなくなり、産卵を女王が担当し、巣作りや餌採り、子供の世話は働きバチが分担する・・・という分業をします。巣全体で1つの個体を構成しているようなものです。

アシナガバチ・スズメバチ類の巣は夏の終わりから秋にもっとも大きくなリますので、この時期、ハチに刺される被害も増えます。このころになると、来年の女王になるべきハチとオスバチが生まれます。新しく生まれた来年の女王になるべきハチだけが、別の巣のオスと交尾をすませ、朽ち木や土の中に潜って、単独でふ越冬に入ります。そして、その巣を作ってきたハチは女王を含めて皆死んでしまいます(ハチのなかまであるアリや、花粉や蜜を食べるミツバチの巣は何年も継続する点がアシナガバチなどと大きく違います)。

ではこれらのハチは本当に怖いハチなのでしょうか?

たしかにこれらのハチは人を攻撃します。しかし、このような攻撃は自分たちの巣に危険が迫った時だけで、そうでない場合、たとえば餌を探しているときなどはたとえスズメバチ類と出会ったとしても、いきなり人を攻撃することはないのです。

でもハチに刺されて死ぬ人もいます。ではその時に刺したハチの毒が強かったのでしょうか。そうではあリません。それはアレルギと関係があるのです。ハチに刺されると「抗体」という物質が体内に作られます。抗体というのは、外部から入ってくる異物に対して、それが体に悪いものだと判断すると、それを排除しようとする働きのある物質です。そろそろひどくなる花粉症も理屈は同じです。この抗体が次にハチに刺されたときに入ってきた毒(抗原)に対して作用し、刺される回数が増えるほど反応が強くなっていきます。アレルギー体質の人は、血圧が下がったり、呼吸困難などに陥り、ショック症状を起こすことがあります。このような症状がでた場合、手当が遅れると死に至ることもあるのです。ハチに刺された人が亡くなった例は徳島県でもありますが、ほとんどの場合、刺したのはアシナガバチ類でした。ハチ毒アレルギーは刺したハチの種類とはあまり関係はないのです。しかし、一番大きいオオスズメバチなどに一度に何力所も刺されると、大量の毒が注入され、アレルギ体質の人でなくても危険な状態になることがあります。やはりスズメバチ類、中でももっとも大型のオオスズメバチには十分に気をつけた方がいいでしょう。

ハチ毒にアレルギーを持つ人は、刺されたときに、呼吸が苦しくなったり、ふらふらするというような症状が現れることが多く、その時はそれでおさまってもこの次は危ないと気がつかなければなりません。そしてその次に刺されることのないように細心の注意をする必要があります。

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