ドイツ・メッセル産コウモリ化石(Palaeochiropteryx tupaiodon) 【表紙】
地学担当 辻野泰之
ドイツのフランクフル卜の南西30kmに位置するメッセル地域には、古第三紀始新世(こだいさんきししんせい)(約4900万年前)の湖の地層が分布しています。この地域の地層は非常にオイル質な細粒な堆積物からなり、本来の色彩を残す昆虫化石や軟体部の印象を残す脊椎動物化石(せきついどうぶつかせき)など、通常、化石として残らない類(たぐ)い希(まれ)な保存状態を示す動植物化石を多く産出します。
ドイツ・メッセル産コウモリ化石
上の写真のコウモリ化石(Palaeochiropteryx tupaiodon)も良好な保存状態を示しており、コウモリの特徴である翼(つばさ)の骨格や翼の膜(まく)までも残されています。コウモリは化石としてたいへん残りにくいものですが、メッセル地域はその数少ない例外のひとつです。この地域で産出するコウモリ化石は地質学的にも最古級のもののひとつであり、コウモリの初期の系統進化を理解する上で重要な化石といえます。この種類はメッセル地域で見つかっている3層のコウモリ化石の中で最も小さな種類です。
メッセル地域は、学術的重要性から1995年に世界遺産に登録され、現在では化石の採集は制限されています。