約40 年ぶりに牟岐町で確認されたアンモナイト化石【情報ボックス】
地学担当 辻野泰之
四国の南部の地質は、四万十帯(しまんとたい)と呼ばれ(図1A)、大型化石の産出が非常に稀なところとして知られています。徳島県の四万十帯では、1967 年に牟岐町古牟岐(ふるむぎ)ではじめてアンモナイト化石が発見されました(図1B)。その後、長らく第二標本は、報告されませんでしたが、牟岐町楠之浦(くすのうら)の海岸に露出するメランジュと呼ばれる特徴的な地層から、和田秀実(わだひでみ)さん(牟岐町在住)によって発見されていたことがわかりました(図2)。メランジュは、本来整然と層をなしていた地層が、地震の原因となる断層運動などによって大きくかき乱され、ごちゃ混ぜの状態になった地層です。化石は、和田さんが小学生のころ(1960年代後半)に採集したもので、個人の宝物として長らく所有されていたものです。最近、研究のため当館に持ち込まれ、当館と徳島大学の共同で調査が進められました。
図 1A:四国南部の地質図、B:牟岐町周辺の地質図
図 2 牟岐町楠之浦で見つかったアンモナイト化石:A:岩石中に見られる化石(雌型)、B:化石本体から取られたゴム型
調査の結果、このアンモナイト化石は、中生代(ちゅうせいだい)の白亜紀(はくあき)最末期(約7000万年前)に知られるゴードリセラス・トンベツエンゼと呼ばれる種にきわめて似た種類(Gaudryceras cf.tombetsense )だということが分かりました。アンモナイトは恐竜などと一緒に約6550万年前に絶滅したことから、このアンモナイトは絶滅直前に生存していた種類になります。この種類のアンモナイトは、これまでロシア・サハリン南部の白亜紀層からしか報告がなされていません。
牟岐町楠之浦の地層は、他の研究※によって恐竜やアンモナイト絶滅後の新生代(しんせいだい)の古第三紀(こだいさんき)と呼ばれる時代(約6200万年前)にできたことが分かっています。そのため、このアンモナイト化石は、恐竜やアンモナイト絶滅後の地層の中に、何らかの原因で紛れ込んだ可能性が高いと考えられます。今後、さらに詳細な研究を進めることにより、周辺地域の地質の成り立ちまで解明できると期待しています。
※ウラン-鉛(U-Pb)法による放射年代測定→ジルコンと呼ばれる鉱物中に含まれるウランと鉛の量の比率を調べて、年代を測定する方法。