Q.徳島にも子育てをする川魚がいるって本当ですか?【レファレンスQandA】
動物担当 佐藤陽一
A. 魚の世界ではイワシやマグロ、タイをはじめ、卵を産みっぱなしの種類が圧倒的に多いのは皆さんご存知のとおりです。このような魚はだいたい産む卵の数も多く、そのことによって生き残りをはかる方向に進化してきたといえるでしょう。その王様は外洋を漂うマンボウで、2~ 3 億個の卵を生むと言われています。
これらの対極にあるのが、少ない数の卵を生んで大切に育てる方向に進化してきた魚です。こちらのタイプの魚は、サンゴ礁(しょう)や岩礁(がんしょう)、川底など、水深が浅く、もの影を利用して生活している魚がほとんどです。ここでは徳島の川に住んでいる子育てをする魚を紹介しましょう。
タウナギ
東南アジア~東アジア原産で、沖縄諸島以外の日本では外来種です。徳島県では石井町と徳島市国府町の一部にのみ生息します。用水路の石垣などに住んでおり、初夏に穴の中に産み付けた卵と生まれたばかりの子どもを雄親が保護します。なお、この魚ははじめは雌ですが、成長すると雄になります。
カジカ小卵型
四国ではほとんどの川で絶滅してしまい、現在生息しているのは徳島県の那賀川下流だけです。真冬の1 ~ 2 月頃、瀬の石の裏に産み付けた卵と生まれたばかりの子どもを雄親が保護します。
オヤニラミ
西日本の清流に生息する魚で、徳島県では桑野川、福井川および椿川だけに生息する希少淡水魚です。初夏にヨシや枯れ枝などに産み付けた卵と生まれたばかりの子どもを雄親が保護します。
オオヨシノボリ
川に住むハゼの仲間です。上~中流域の早瀬の石の裏に卵を産み付け雄親が保護します。ハゼの仲間は本種に限らずほとんどの場合、雄親が卵と生まれたばかりの子どもを保護します。
さて、こうしてみると、魚の場合は卵や子どもの世話をするのは雄親だけと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。確かに雄親の場合が多いのですが、アフリカ原産で、徳島県の吉野川下流域の水路などにも生息している外来魚ナイルティラピアは雌親が卵や子どもを口の中で保育します。この様に、魚の世界の子育ては多様なことが分かります。