私と徳島県立博物館【特集】
動物担当 井藤大樹
私は2019年に徳島県立博物館の脊椎(せきつい)動物担当学芸員として着任(ちゃくにん)しました。淡水魚類(たんすいぎょるい)の分類や進化などを専門にしています。徳島県立博物館は私がこの道に進む原点ともいえる場所です。
徳島県立博物館が文化の森総合公園で開館したのは1990年です。この年は、当時2才だった私が両親と共に徳島にやってきた年でもあります。
私の出身は香川(かがわ)県小豆島(しょうどしま)ですが、父の仕事の関係で2才から8才までを徳島市の上八万(かみはちまん)町で過ごしました。私は幼少期から水辺に棲すむ動物が好きだったようです。今ではあまり記憶がありませんが、母から聞くところによると、幼稚園から脱走し、アメリカザリガニやアマガエルなどを捕つかまえていたとのことです。小学校に入学してからも、園瀬川(そのせがわ)や鮎喰川(あくいがわ)で魚とりや釣りをして遊んでいました。そんな幼い頃の私が博物館に出入りするようになるのは自然なことでした。常設展示室に展示されたナウマンゾウ(図1A)や県南の海のジオラマ、壁一面の魚の剥製などよく覚えています。人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)の人形の顔だけが並んだ展示には恐怖を感じたものでした。
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図1 A:およそ26年前の筆者と同い年の従弟、B:2019年の筆者と同い年の従弟v
なんの因果(いんが)か、私は2019年に徳島県立博物館の学芸員として徳島に戻ってきました。私が徳島を離れておよそ24年が経過していましたが、常設展示室は当時のままでとても懐かしく(図1B)、感慨深(かんがいぶか)いものがありました。2021年にこの常設展示室がリニューアルされます。私の原点であり、幼い頃の思い出がつまった常設展示室が変わってしまうのは少しさみしく思います。しかし一方で、リニューアルした展示が、これからの子供たちの興味や関心のきっかけになるかもしれないと考えるとわくわくしてくるのです。