博物館ニューストップページ博物館ニュース122(2021年3月25日発行)古墳の被葬者は女性?男性?(122号情報ボックス)

古墳の被葬者は女性?男性?【情報ボックス】

考古担当 岡本治代

古墳(こふん)時代(3世紀半ばから7世紀)には、日本列島の広い範囲で約16万基もの古墳が築かれました。しかし、そのうち被葬者(ひそうしゃ)(埋葬(まいそう)された人)の性別が明らかにされている古墳はごく一部です。この背景には、日本特有の事情があります。

被葬者の性別は、古墳から出土する人骨、歴史書や墓誌(ぼし)など被葬者について記された文字資料、遺体(いたい)に供(そな)えられた副葬品(ふくそうひん)などから推定することができます。しかし、日本の気候は湿潤(しつじゅん)で微生物が繁殖しやすいことに加え、酸性土壌が基本なので、木製の棺(ひつぎ)や遺体などは遺(のこ)りにくいのです。また、古墳時代の日本列島では文字があまり普及しておらず、被葬者について記した文字資料はほとんどありません。さらに、副葬品から性別を判断するのにも、ハードルがあります。たとえば、古墳にしばしば副葬されるネックレスや腕飾(うでかざり)などのアクセサリーは、現代では女性が身につけることが多いものですが、はたして古墳時代にも同じような価値観だったかどうかはわかりません。副葬品と性別を結び付けるには、一定の検証作業が必要なのです。

そのような中でも、石棺(せっかん)など腐らない棺材で酸性土壌から遺体が保護され、かつ密閉空間が保たれている場合は、人骨が遺っていることがあります。こうした希少な出土例をもとに、被葬者の性別や年齢に関する研究が行われています。さらに、被葬者の人骨が出土した古墳で、その性別と副葬品の種類との対応関係を分析することで、女性が被葬者の場合に多い副葬品、男性が被葬者の場合に多い副葬品がわかってきました。これによって、人骨が遺っていない場合にも、この副葬品が出土すれば葬られているのは女性/男性の可能性が高い、と判断できるのです。徳島県内でも、徳島(とくしま)市恵解山(えげやま)古墳群や犬山天神(いぬやまてんじん)山古墳などでは、被葬者の性別や年齢が明らかになっています(図1、2)。

図1 徳島市恵解山9号墳北棺出土人骨/幼児の人骨

図1 徳島市恵解山9号墳北棺出土人骨/幼児の人骨

図2 徳島市犬山天神山古墳ST1007出土人骨/老年女性の人骨(徳島県立埋蔵文化財総合センター提供)

図2 徳島市犬山天神山古墳ST1007出土人骨/老年女性の人骨(徳島県立埋蔵文化財総合センター提供)

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