花の色の紙を作れるって本当ですか?【レファレンスQandA】
植物担当 小川誠
植物の花は青や赤、紫、黄など様々な色をしています。これらの色の紙を作れたら楽しいですね。
本誌118号(2020年3月発行)の「外来植物とのつきあい方」の記事で、オオキンケイギクの花から色素を取り出し、木綿の布を染める方法を紹介しました。木綿はワタの種子から取り出した繊維(せんい)でできていて、セルロースが主成分です。一方、紙の原料はパルプと呼ばれる植物の茎や皮の繊維を原料としていて、これもセルロースが主成分です。ということはオオキンケイギクと同じ方法で色を取り出し、パルプを染めることができそうです。
オオキンケイギクから色をとりだす方法をおさらいしてみましょう。①花をボールに入れて、10%のクエン酸溶液(クエン酸100gを水900㏄に溶かしたもの)に一晩くらい漬(つ)け込みます。②ザルなどで液を濾(こ)して花を取り出し、染色液を作ります。③4時間以上木綿の布をつけて染めます。④水洗いして余分な染色液を取り除きます。液が酸性になるため容器はアルミではなく、ステンレスやプラスチックのボールを使いましょう。紙を作る場合は、③で木綿の代わりにパルプを入れると染まります(図1)。
パルプは一から作ることができますが、牛乳パックを水につけておいて表面のビニールをはぐと、良質なパルプを簡単に得ることができます。図2と図3にいろいろな植物で染めたパルプを示しました。重曹(じゅうそう)などを加えてアルカリ性にすると(アルカリ処理)、色が変わります。また、花だけでなく、筍(たけのこ)や茄子(なす)の皮、ブルーベリーやブドウの実からも色を取り出すことができます。ただ、すべての花から色を取り出せるわけではなく、オオキンケイギクと同じキク科で黄色の花をつけるカンサイタンポポは色が出ません。これは、同じように見える色でもその色素の種類が異なっているからです。オオキンケイギクのように酸で取り出せる黄色の色素もあれば、タンポポのように酸では取り出せない色素もあります。試してみたところ、一つの花の中で黄色と紫色の部分があるパンジーの花では、紫色の部分からは色が取り出せて、黄色は色が出ませんでした。一つの花の中に異なる種類の色素を持つなんて、植物の世界は不思議なことがたくさんありますね。
図1 オオキンケイギクで染めたパルプで漉いた紙。中央の白い部分は、無染色のパルプを猫のクッキー型を使って流し込んだもの
図2 植物から取り出した色で染めたパルプ。右からオオキンケイギク、オオキンケイギク(アルカリ処理)、ヒメヒオウギズイセン、マダケの筍の皮、ヘクソカズラ
図3 植物から取り出した色で染めたパルプ。右からミツマタ、ヤナギバルイラソウ、ムクゲ、ペチュニア、ペチュニア(アルカリ処理)