輝安鉱

地学担当 中尾賢一

輝安鉱

輝安鉱はアンチモンと硫黄からできている鉱物です(アンチモンは鉛に混ぜて活字合金にしたり、自動車用バッテリーや蛍光灯などの一部に使われている金属です)。融点が低<、ロウソクの火でも簡単にとけてしまいます。また、たいへんやわらかく、ツメで簡単にキズがつきます。この性質のために曲ったりよじれたりしているものがよくあります。輝安鉱はアンチモンをとるための鉱石として採掘されています。

鉱物のなかには、巨大な大きさでひときわ人目をひくものがありますが、輝安鉱はそのような意昧で日本を代表するものです。ふつうの輝安鉱の結晶は長さ1~2cmほどで針状ですが、明治時代、現在の愛媛県西条市にあった市ノ川鉱山からは、多くは20~30cm、最長のものは2mにもなる日本刀のような結晶が大量に産出しました。このとき採掘された結晶は、現在世界各地の大学や博物館に収蔵・展示されています。一流品のほとんどは外国に流出していて、日本には良品が少ないとまでいわれています。現在は市ノ川鉱山は閉山していて、まったく何もとれなくなっています。

博物館では市ノ川産輝安鉱を数点収蔵しています。このなかには一時外国に流出していたと考えられるものもあります。写真1は全体の長さが31cmになる群晶で大小さまざまな大きさの細長い結晶からなっています。ひとつひとつの結晶のタテ方向には平行な細かい線(条線)がたくさん入っています。これは輝安鉱の結晶の特徴のひとつです。写真2の2点の長さは、左が22cm、右が30cmです。ともにいくつかの結晶が集まってできていますが、写真1とくらべると向きがそろっています。2点とも写真1と同様の条線が入っています。右側の結晶は長く空気中におかれていたために表面が酸化して黒ずんでいますが、もともとは写真1の群晶のように、鉛に似た金属光沢をはなっていたはずです。写真1 _全体の長さが31cmになる群晶

写真1  全体の長さが31cmになる群晶

 

写真1とくらべると向きがそろっています

写真2 写真1とくらべると向きがそろっています

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