前山1号墳の発掘調査(2)【速報】

考古担当 高島芳弘

前山古墳群は名西郡石井町、県道石井神山線の石井側からの登り口の南側山頂部付近にあります。2つの古墳が並んでおり、標高は約160mほどです

博物館では、平成7年度から継続的な調査を行っています。平成10年度には、前山1号墳の墳丘の大きさの確認を目的とする発掘調査に取りかかり、平成11年度は、埋葬主体部である後円部の竪穴式石室(たてあなしきせきしつ)の形態と、副葬品(ふくそうひん)の確認のための発掘調査を行いました。また、後円部の墳丘の南斜面で、墳形確認のための補足的な調査を行いました。

埋葬主体部は、すでに盗掘を受けている石室内の観察から、竪穴式石室の中に箱形石棺(はこがたせっかん)を持つタイプだと考えられていました。
平成11年度の調査では、石室の床面まで掘り下げましが、北寄りについては、盗掘によってかなり破壊されており、床の構造などは不明でした(図1)。

図1後円部調査風景・見学者への説明

図1後円部調査風景・見学者への説明


埋葬主体部は、後円部のやや前方部寄リに設けられており、前方部側と後円部の中央付近の墓壙(ぼこう)の掘り込みと思われる部分に沿って、板状の緑色片岩(りょくしょくへんがん)が南北に並んで立っています。

床には赤みの強い粘土を敷いてその上に割竹形木棺(わりだけがたもっかん)を据え、東西両側に板状の緑色片岩を並べ、その側板に接するように竪穴式石室を築いていました。調査前に箱形石棺と考えていたのは木棺を囲った板状の緑色片岩でした。石室は南北に細長く長さ約3.1m、幅は北側で約1m、南側で約0.8mで、石室の南壁は緑色片岩の一枚板です(図2)。

図2 竪穴式石室の南壁

図2 竪穴式石室の南壁

 

中央より東にはやや小ぶりの緑色片岩の割石が積まれています。主体部が西に偏っていることから、東側にもう一つ石室がある可能性があります。
石室からは遺物はほとんど出土しませんでしたが、後円部平坦面トレンチの東寄り中央付近で土師器壺(はじきつぼ)のやや大きな破片がまとまって出土しました。器形は単純な口縁の広口壺のようです。

後円部墳丘については、南側は昨年調査した東側、北側と異なり全面が緑色片岩の葺(ふ)き石に覆われていたと考えられます。裾(すそ)の部分の葺き石は小口積みされ上半では平積みされています(図3)。

図3後円部墳丘南斜面の葺き石

図3後円部墳丘南斜面の葺き石

 

石室の構造、後円部墳丘の形態、東側の石室の有無をはっきりさせるためには、後円部全体にわたって断ち割リを入れて調査する必要があります。これらの検討と土師器壺の検討を通して古墳の年代を明らかにしていかねばなりません。

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