博物館ニューストップページ博物館ニュース028(1997年8月15日発行)Q.地球上にはどれくらいの種類の生き物がいるのですか?(028号QandA)

Q.地球上にはどれくらいの種類の生き物がいるのですか?【レファレンスQ&A】

動物担当 田辺力

A 地球上にはいったいどのくらいの種(しゅ)(注)が住んでいるのでしようか。推測によると数千万から1億種はいるのではないかと言われています。数字だけでは実感がわかないかもしれませんが、1億というのは日本の人口に近い数ですから、これはたいへんな数字です。私が種の数の多さを実感するのは採集している時です(図1)。

 

図 1 与那国島のサンゴ礁で、 夕方の 2時間ぐらいで 採集した動物。サンゴ礁での夕方の採集は気持ちが よい。採集は生き物の多様さを実感させて くれると とも に、狩猟本能を満足させてく れる。シ ダのよ う なものはウミシダと いう動物

図 1 与那国島のサンゴ礁で、 夕方の 2時間ぐらいで採集した動物。サンゴ礁での夕方の採集は気持ちが
よい。採集は生き物の多様さを実感させて くれるととも に、狩猟本能を満足させてく れる。シ ダのよ う
なものはウミシダという動物

 

人類は、過去200年にわたって種に名前をつけてきました(矢原,1997) Hammond(1995)によれば約175万種の生物に名前がついていますが、この数字は全生物の種数の推定値、1億種という数字にくらべて少ないですね。そうです、地球上には、まだ名前のついていない種がたくさんいるのです!今までに名前がついている種は全体の17.5%にすぎません。図2に主なグループについて、名前のついている種数と名前のついていない種数(推定)を示します。名前のついている種数(黒)にくらべて、名前のついていない種数(白)の方が多いことが一目瞭然です。事実、私たちの身の回リには、名前のついていない種(新種)がたくさんいるのです。例えば、近くの林の落ち葉の中には新種のダ二などがいると思っても間違いではないのです

次にどのグループが種数が多いのかをみてみましょう。図2で白と黒をたした値がそのグループの種数となリます。図から明らかなように毘虫がダントツで多いのです。「猿の惑星」という映画がありましたが、種数からみれば、地球はまさに「虫の惑星」なのです。

図 2 主なグル プにおける種数。毘虫がダン トツ で多いことがわかる。 Hammond(1995)を改変。

図 2 主なグル プにおける種数。毘虫がダントツで多いことがわかる。 Hammond(1995)を改変。

図2で白い部分の割合が多いグループは、それだけ名前のついていない種が多くて、研究が進んでいないグループということができます。バクテリアやウイルスについては、白ばっかりで、まだほとんど名前がついていませんね。対照的に私たち人間や、ネコ、魚など背骨をもつ動物が含まれる脊椎動物では黒が多いですから、かなりの種に名前がついています。

(注)ノココギリクワガタやヒラタクワガタなど、名前がついている単位が多くの場合「種」にあたります。
引用文献
矢原徹一,1997.種の多様性と生物多様性.遺伝別冊9号:13-21.
Hammond, P.M. 1995. The current magnitude of biodivesity. In Global Biodiversity  Assessment,Heywood, V. H. ed., Cambridge University Press, pp. 113 ‐138.
 

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