おかずの博物学【CultureClub】

動物担当 田辺力

食事は四季折々のさまざまな生き物に出会える場です。毎日の食卓で、あるいは買い物のついでに、旬(しゅん)の生き物たちを観察してみましょう。

アサリの模様

食卓の定番、アサリについては、その模様が一つ一つ異なる(図2)理由について、博物飽ニュースNo. 33で一つの考え方をご紹介しました。今回はそれを図にしてみましたのでご覧ください(図1)。

図1アサリの模様について

図2アサリは一つ一つ模様が異なる

図2アサリは一つ一つ模様が異なる

ガザミの種類の見分け方

魚屋さんやスーパーでよくみられるカニにガザミ(渡リガニ)のなかまがあります。すでにお気づきかもしれませんが、ガザミにはいくつか種類があります。徳島で買うことのできるガザミは主に5種です(図3-5)。それらの見分け方を図6にかきました。甲らの形と模様、それとハサミにあるトゲがポイントです。種類によって味も少しずつ違いますから、今度、ガザミを召し上がる際には名前を調べてみてはいかがでしょうか。この5種のうち徳島でもっとも多いのはジャノメガザミで、紋(もん)ガニとも呼ばれています。ちなみに図6のょうに、図によって種類を見分けることのできるようにしたものを検索(けんさく)図と呼びます。
ここでは名前の調べ方の一例をご紹介しましたが、そもそも名前の役目とはなんでしょうか。かんさつ会をしていて、いちばん多い質問は「この生きものの名前はなんですか」というものです。生き物にかぎらず、とかく私たちは「もの」の名前を知リたがリます。なぜでしょうか。名前には「めんどうな説明をしないですむ」という役目があリます。にんじんを「にんじん」という名前なしで伝えようとすると、オレンジ色で長さは20cmぐらいの細長い野菜で... となリめんどうです。名前の役割については日頃の会話では意識することはないのですが、名前は私たちの会話を楽にしてくれています。食卓にのぼる生きものの名前には、かぼちゃ、はまち、あさリ、などなかなか味のある語感をもったものが多くあり、これらは私たちの文化の大切な財産だと思います。なお、ガザミの足のっくりと働きについては博物館二ユースNo.33で説明しています。

図3 ジャノメガザ ミ

図3 ジャノメガザ ミ

 

図4 ガザミ

図4 ガザミ

図5 イシガニ

図5 イシガニ

図6ガザミの検索図

 

赤貝のかんづめ

赤貝の「赤」とはどういう意味しょうか。かんづめをあけて中身をだしてみてもかっ色だし、貝がらをみても白地にかっ色で赤ではありません(図7)。赤貝の「赤」は、実は私たちの体の中を流れる血の赤と関係があリます。私たちの血が赤いのは血の中にヘモグロビンという赤い色素があるためですが、赤貝の血にもヘモグロビンに近い構造をもつ工リトロクルオリンというやはり赤い色素があります。無せきつい動物(背骨をもたない動物)では赤貝の他に、ゴ力イやミミズのなかまなどにも赤い血をもつものがいます。ついでに一つ種明かしをすれば、赤貝のかんづめに使われている貝は実はアカガイという種類ではなく、ア力ガイに近いサルボウガイという貝です。かんづめの内容物の説明のところを見ると、ちゃんと「赤貝(さるぼう貝)」と書いてあります。

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