博物館ニューストップページ博物館ニュース042(2001年3月25日発行)金製ジャガー・双子鼻飾り(042号表紙)

金製ジャガー・双子鼻飾り【表紙】

(クントゥル・ワシ遺跡出土、紀元前800年頃、16.5×11cm、日本経済新聞社提供)

地学担当 両角芳郎

文字や鉄の道具をもたず、牛馬のような大型の家畜(かちく)もいなかった南米のアンデスで、巨岩の建築物や独特の色彩とデザインの工芸品をもつ文明がどのようにして生まれたかは、大変興味あるテーマです。後のインカ帝国へと継承(けいしょう)される文明の形成過程をさぐるため、東京大学古代アンデス文明調査隊はペルーのアンデス山中で数10年にわたって発掘調査を行ってきました。中でも、1988年から始まったクントゥル・ワシ遺跡の発掘では、アンデス最古(紀元前800年頃)の多数の金製品を発見するなど、数々の成果をあげました。

写真はH字形をした金製の鼻飾(はなかざ)りです。中央に牙(きば)をむいたジャガーの顔が、両側には小さな裸(はだか)の人物の図柄が打ち出されており、南米大陸に広く分布する双子(ふたご)とジャガーなどの怪物の登場する神話を表現したものと考えられます。今から3000年も前のものでありながら、その表現は現代にも通じる高い芸術性(げいじゅつせい)を備(そな)えているのには驚(おどろ)かせれます。
企画展「日本人ペルー移住100周年記念クントゥル・ワシ神殿の発掘-アンデス最古の黄金芸術-」(4月6日~5月6日)では、これらの金製品をはじめ、古代アンデス文明の最初の息吹(いぶき)を感じさせる土器、石彫、石像などの工芸品(こうげいひん)や彫刻(ちょうこく)の数々を紹介します。

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