園瀬川で発見されたタコノアシとフジバカマ【速報】

植物担当 小川誠

レッドデータブック（RDB）に掲載されている絶滅危惧（ぜつめつきぐ）種が2種、園瀬（そのせ）川の周辺で発見されました。どちらも県内ではめったに見られなくなった植物で、道路士事や河川改修などによって絶滅する可能性があるので報告します。

タコノアシ

川やため池などの流れのゆるやかな泥湿地（ていしっち）に生える植物で、環境庁のRDBでは絶滅危慣Ⅱ類（絶滅の危険が増大している種） に指定されています。河川改修や農地改良、ため池の埋め立てなどで生育環境が奪われ激減しており、このままだと300年後には絶滅するとのことです。

徳島県内では山川町・板野町・石井町・市場町・徳島市に記録がありますが、現在では、宍喰（ししくい）町と鳴門市で生育がみられるだけです。徳島市内ではかつて吉野川周辺やため池などに生育していたものの、最近は確認されていませんでした。ところが、徳島県版RDBの調査員である田渕武樹（たぶちたけき）氏が、園瀬川近くの徳島市八万町の水路横で発見し、筆者が追加調査したところ、園瀬川横の用水路でも生育を確認しました。

タコノアシの花序（上）。蛸の足のような形をしているので、その名が付いた。花の拡大（下）。小さな目立たない花をつける

フジバカマ

河川やため池ののり面、田の畦（あぜ）などの草地に生える植物で、環境庁のRDBでは絶滅危倶Ⅱ類に指定され、絶滅の危険が増大している種です。秋の七草の一つであり、かつては身近な植物でしたが、草刈りや河川の氾濫（はんらん）による定期的な撹乱（かくらん）を受ける、生育に適した草地が減っているため激減しており、100年後には絶滅してしまうといわれています。

県内では佐那河内村 池田町・板野町 ・川島町・神山町・鳴門市・徳島市に記録がありますが、現在では、阿南市・小松島市・那賀川町などの那賀川や勝浦川周辺で生育が確認されるだけです。園瀬川では数年前八万町の河川敷で過去に1個体だけが見つかりましたが、現在ではみられなくなっていました。2001年9月24日に徳島県立博物館友の会で開催された野外調査行事「園瀬川探検」で、上八万町の園瀬川近くの用水路横で発見されました。現地は、改修工事が行われていない昔ながらの用水で、定期的な草刈りが行われており残っていたのでしょう。その後の調査で八万町の園瀬川の土手でもフジバ力マは見つかりました。

フジハカマの頭花（上）。キク科の特徴である、小さな花が集まって一つの花のように見えている。全体が薄く赤みを帯びている。フジバカマ の生育状況（下）。水田の横を流れる小さな用路脇に生 えて いた。

私たちの身の回リには、案外自然が残っています。今回見つかった絶滅危慣種も、こんな身近なところにあったのかと思うような場所に生えていました。ぜひもう一度身の回リの植物に目を向けてみてください。