今山の農村舞台(続報)【速報】
民俗担当 庄武憲子
勝浦町今山(かつうらちょういまやま)にある今宮神社の農村舞台は、博物館二ユースNo46でお伝えしましたが、9月28日(土)に舞台お披露目(ひろめ)となる人形浄瑠璃芝居(にんぎょうじようるりしばい)や地元の人々による日舞(にちぶ)、お手玉、三味線(しゃみせん)、詩吟(しぎん)等が上演されました。今回はその様子について報告したいと思います。
今山の農村舞台は、「平舞台(ひらぶたい)」から「舟底舞台(ふなぞこぶたい)」に転換できるしくみを持つ「仮設式舟底舞台」という貴重な舞台であるということが分かリました。1月にこの転換機能を実際に試行した時に今山地区の人々を中心に保存会が結成され、この舞台の保存・活用へ向けての動きが始まりました。
当日は、日本建築学会四国支部の主催により、今山地区で「阿波の農村舞台と人形浄理璃」というテーマのもと、講演会・パネルディスカッションがが行われ、今山の農村舞台の意義や保存活動の状況、今後の指針などが集まった人々に周知されました。その後に実際の舞台お披露目として舟底舞台の形で人形浄瑠璃芝居が約50年ぶりに上演されました。また人形芝居上演の後は舞台の機能をいかし、すばやく床板が組み換えられて平舞台への転換が行われ、子供から大人まで地元の人々が、お手玉演舞、ダンス、日舞や詩吟などを演じました。
図1 上演前に行われた舞台構造についての説明会
図 2 勝浦座による舞台お披露目はじめの式三番叟上演
舞台のお披露目は、保存会の人員を中心に地元の人々が協力しあって、傷(いた)みのひどかった太夫座(たゆうざ)や舞台の床板(ゆかいた)や、屋根瓦(やねがわら)の一部を応急処置するなどの尽力(じんりよく)によって実現しました。上演時には舞台の周囲には屋台が並ぶなどして賑(にぎ)わいました。集まってきた人々は親、子、孫の3代にわたる家族連れが多く、時には持参の食物やお茶を口にしながら和気あいあいと演目を楽しんでいました。また秋の宵(よい)に灯(とも)された舞台上演の光はとても美しく、地元の人々の努力のかいあって、農村舞台の雰囲気、また舞台が活用される楽しさが、少なからず集まった人々に伝わったのではないかと思います。
図 3 今宮神社境内に灯った舞台の光
舞台の保存については、太夫座のゆがみを直したり、内装、絵襖(えぶすま)の補修をする必要があるなどのいろいろな課題がありますが、舞台の活用を今後とも継続できるようにと、保存会を中心に努力が続けられています。