田んぼの魚道【速報】

動物担当 佐藤陽一

普通、魚道(ぎょどう)というと、コンクリート製の階段状のものを思い浮かべると思います。河道(かどう)に取水のための堰(せき)や河床勾配(かしょうこうばい)を緩やかにするための落差工(らくさこう)を設置すると段差ができてしまい、魚などの水生動物が上り下りできなくなってしまいます。それを防ぐために魚道が設けられます。どこの川にも必ずといっていいくらいあるので、皆さんもきっとご覧になったことがあるでしょう。

図1 水田魚道の設置の様子(小松島市立江櫛渕土地改良区)

図1 水田魚道の設置の様子(小松島市立江櫛渕土地改良区)

今回ご紹介する魚道は水路と田んぼとの間をつなぐ小さな魚道です。なんでこんな所に魚道を、とお思いになるかもしれませんね。これにはちゃんとわけがあります。

田んぼは田んぼでも、現在みられる田んぼと、一昔前の田んぼでは、構造が異なります。昔の田んぼでは水路と田面(でんめん)の高さが同じか、段差はあったとしてもわずかでした。しかし、今の田んぼは、必要な時にだけ水を入れ、必要のない時には水を抜くことができるよう、田面の高さをかなり上げてあります。そのため水路と田面との間には大きな段差が生じ、魚が上ることはできなくなってしまいました。

図2 斜めに切った仕切り板を配した木製魚道

図2 斜めに切った仕切り板を配した木製魚道

本来、コイやフナ、ドジョウ、ナマズ、メダカといった下流域の魚は、春になって川が増水すると、水に浸った陸地(氾濫原(はんらんげん))へと入り込んで産卵したり、仔稚魚(しちぎょ)の間をそのような場所ですごしていました。人間が川を制御(せいぎょ)するようになり、氾濫原が少なくなっても、一昔前までは田んぼが氾濫原の代わりとなっていたのです。それは田面が低かったからです。田んぼは魚の生息場所としても重要だったのです。

徳島県では今年の7月から水田魚道の実験を始めました。まだ始めたばかりで、詳しい成果のほどはわかりませんが、さっそくメダカやドジョウが遡上(そじょう)することが確認されました。今後、調査によって魚道が改良され、多くの田んぼに設置されて、魚が棲(す)みよい田んぼが復活することを願ってやみません。

図3 蛇腹状の溝のある樹脂製魚道(コルゲート管魚道)

図3 蛇腹状の溝のある樹脂製魚道(コルゲート管魚道)

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