ニホンオオカミ【表紙】
動物担当 佐藤陽一
シーボルト「日本動物誌」に掲載されたニホンオオカミの図(徳島県立博物館蔵)
かつて日本には2種のオオ力ミが生息していました。北海道にいた工ゾオオ力ミと本州・四国・九州にいた二ホンオオ力ミです。工ゾオオカミは1896年(明治29年)、二ホンオオ力ミは1905年(明治38年)の捕獲記録が最後です。ただし、二ホンオオカミの場合は研究がなされる以前に絶滅してしまったため、その分類学的・生物学的実態はよくわかっていません。
絶滅の原因にしても、工ゾオオ力ミではわかっていますが、ニホンオオカミではよくわかっていません。工ゾオオ力ミは、北海道開拓を進めるうえで、家畜などに被害をもたらす邪魔者として駆除(くじょ)されました。しかしそれだけでなく、明治期に持ち込まれたジステンパー・ウイルスによる感染も大きな影響を与えたのではないかといわれています。ニホンオオ力ミもほぼ同時期に絶滅していますので、やはり同様の原因だったのではないでしょうか。
さて、徳島県にも二ホンオオ力ミが生息していたらしいことがわかっています(写真-左)。四国では他に高知県仁淀(によど)村の民家にも、ニホンオオ力ミとされる頭骨が保存されていることがわかっています。同様の例は日本各地にあり、例えば、神奈川県の丹沢(たんざわ)地方では23個もの頭骨が確認されています。これらの多くは民間信仰に関係して伝えられてきたものです。
徳島県美馬市の民家に伝わるニホンオオカミとされる頭骨(徳島県立博物館保管)
ニホンオオ力ミは、企画展「絶滅」で紹介します。