クラゲ、サンコ、イソギンチャクは同じグループなのに形が違っていて不思議です【レファレンスQ&A】
動物担当 田辺力
A. しばしば生きものには同じグループなのに形がまったく違っていることがあって驚かされます。こういうことがあるから自然観察はおもしろいのですね。そういうものの一つとして、ここでは刺胞動物(しほうどうぶつ)をご紹介しましょう。
クラゲ、サンゴ、イソギンチャク(図1、2、3)は形がそれぞれ違っていますが、いずれも刺胞動物とういグループに含まれます。同じグループというからにはなにか共通の特徴を盛っていると思われます。一つはグループ名のもとになっている刺胞と呼ばれる毒針を触手(図4)に持っていることです。クラゲに刺されるのはこの刺胞の仕業です。そして、もう一つもっとおもしろい特徴があります。この特徴を理解すれば、なるほど同じグループかと納得していただけることでしょう。
図1ミドリイソギンチャク、徳島県鳴門市龍宮の磯
図2アカクラゲ、徳島県鳴門市龍宮の磯
図3ミドリイシの一種(サンゴのなかま)
その特徴とはイソギンチャクの形です(図1、4)。イソギンチャクの形とは胴体は円錐形(えんすいけい)で、上面の中央に口があり、口の周りを触手が取り囲んでいるものです。クラゲやサンゴも実はこのイソギンチャク形の生きものなのです。まずクラゲからみてみましょう。一言で言ってしまうと、「イソギンチャクを岩から離してひっくり返してみると、クラゲになる」となります(図4)。これは冗談ではありません。もう少しくわしくクラゲの一生をみてみれば納得していただけると思います。クラゲの一生を図5に示してあります。卵から孵化(ふか)した幼生はプラヌラと呼ばれ、これは岩などに付着し、そこで成長してまさにポリプと呼ばれるイソギンチャク形になります。ポリプが成長すると横に切れ目が入って、お皿を重ねたようなス卜口ピラになります。そして、それぞれのお皿がはずれて工フィラとなり、それが成長してクラゲになります。この工フィラになるときに「イソギンチャクがひっくり返ってクラゲ」になっています。
図4イソギンチャクとクラゲ(イソギンチャクを岩から離してひっくり返すとクラゲになる)
図5クラゲの一生
図6左:ミドリイシの一種(拡大)写真の穴一つ一つに小さなイソギンチャクが入っている。右:生きて活動中の状態(イメージ図)
では、サンゴはどうでしょうか。これは海中で生きて活動しているサンゴに近寄って見てみれば一目瞭然(いちもくりょうぜん)なのですが、普段私たちが見慣れている置物のサンゴ(図3)ではわかりません。図6-左は置物のサンゴを拡大したものです。小さな穴がたくさん開いていますが、実はサンゴが生きているときはこの穴にイソギンチャクが一匹ずつ入っているのです(図6-右) 。そう、サンゴとは小さなイソギンチャクの集合体なのです。置物のサンゴはイソギンチャクの部分を取り除いた骨格だけなため、イソギンチャクのイメージがわかないのです。
海の生きものには刺胞動物以外にも、ウ二、ナマコ、ヒトデなどが含まれる棘皮動物(きょくひどうぶつ)など形の違ったものが含まれるグループがあり、好奇心をかき立てられます。刺胞動物も棘皮動物も潮のひいた磯で手軽に観察できます。休みの日にでも、近くの磯で生物観察をしてみてはいかがでしょうか。