博物館ニューストップページ博物館ニュース059(2005年6月25日発行)標本交換:オレゴンの花がやってきた♪(059号情報ボックス)

標本交換:オレゴンの花がやってきた♪【情報ボックス】

植物担当 茨木靖

 

徳島県立博物館では、研究や展示、普及といっこ様々な活動に活用するために国内外の大学・博物館などと標本交換をしています。標本交換とは、徳島県内などで採集した標本を他の地域の大学・博物館などとの間で交換することです。

 

ところで、標本を交換すると一体どんなよいことがあるのでしょうか? つ面白い例がありますのでご紹介しましょう。ある早春のこと、北海道からやってきた植物にくわしい友達と道を歩いていました。すると彼がキランソウを見て、「こりゃ何だ?すごい綺麗(きれい)な花だなあ!見たこと無いよ!」というのです。キランソウは徳島県では道ばたのありふれた草なので、ひょっとしてからかわれているのかなと思ったほどですが、なんと北海道には自生しないのだそうです。まさに“所変われば品変わる”ですね。こんなわけですから、お互いの地域の標本を交換すれば、それぞれ珍しい標本を手に入れることができるというわけです。また、同じ種の植物でも生育する地域が変わると形や大きさが微妙に変わってきます。このため、植物の変異を比較し研究をする場合には、いろいろな地域の標本を集めることが欠かせません。こんな時も標本を交換しておけばとても便利なのです。

さて、徳島県立博物館では現在、北海道大学、東北大学、福島大学そしてオレゴン州立大学と植物標本の交換を行っています。

以下では、特にオレゴン州立大学から届いた標本についてご紹介しましょう。

オレゴン州はアメリ力合衆国西部の州です。面積は本州と四国をあわせたほどの大きさで、海岸から高い山々までの多様な環境を備えた大変美しい所です。
これまでに何百点もの標本を交換してきましたが、さすがに太平洋を越えると、中には随分変わった植物も含まれています。

たとえば、ハゼリソウ科(Hydrophyllaceae)の植物(図1)。科とは、近縁な植物のなかまを集めたグループのこと。ほら、イヌ科とかネコ科とか言うのを聞いたことがあるでしょう?このハゼリソウのなかまは、近年のDNAによる系統解析ではムラサキ科に近いとされ、世界に約250種が広く分布しますが、日本を含めたユーラシア大陸のほとんどには自生しません。
ガリア科(Garryaceae)の植物も日本には自生しないものです(図2)。この科は13種から成り,アメリ力合衆国西部~パナマ、ジャマイ力にかけて分布します。花序(かじよ)が尾のように長い“尾状花序(おじょうかじょ)”であることからヤナギ科やヤマモモ科に近縁と考えられてきましたが、現在では、むしろ徳島県などにも見られるミズキ科のアオキなどに近緑だと考えられるようになってきました。

図1ハゼリソウ科の植物の標本

図1ハゼリソウ科の植物の標本

図2ガリア科の植物の標本

図2ガリア科の植物の標本

この他にもいろいろな珍しい植物の標本が交換によって当館に収蔵されてきています。今年の秋、このうち、ほんの一部ですがオレゴンの植物を展示する予定です。皆さんぜひご覧下さい。

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