野外自然かんさつ 磯の生きものを飼ってみよう【野外自然かんさつ】
動物担当 佐藤陽一
引潮の時に磯へ行くと、いろいろな生きものに出会うことができます。当館で毎年開催している野外自然かんさつ「磯の生きもの」でも、たくさんの生きものに出会うことができます。参加者の中には、自分で採集した生きものを飼ってみたいと思う方も少なくないようです。今回は、磯の生きものの簡単な飼い方についてご紹介します。
まず、飼育するにあたって必要な機材ですが、下の表を見てください。これらは生きものを採集する前に用意しておかなければなりません。釣具店やホームセンター、ペットショップても入手できます。1の輸送用バケツは、釣具店にある活(い)き餌(え)用のバケツをお勧めします。輸送中の水温変化を抑えることができ、電池式の携帯用工アーポンプ(これも釣具店にあります)を入れるためのポケットも付いていて便利です。5のコンテナは水槽の代わりです。手入れが簡単なのでこれを使います。9の砂と石は、生きものを採集する場所で採ればよいでしょう。砂はできるだけ細かく、泥を含んでいないものを用意してください。使用する前に水道水で洗っておきます。
必要な機材
1 輸送用バケツ
2 携帯用工アーポンプ
3 投げ込み式小型フィルタ
4 小型の手網
5 プラスチック製コンテナ
6 コード式の工アーポンプ
7 人工海水
8 海水用比重計
9 砂と石
機材が揃ったらコンテナに人工海水と砂・石を入れ、工アーポンプとフィルタで海水を濾過(ろか)しておきます。人工海水の濃度は、比重計できちんと確認しておいてください。天然の海水は、雑菌が多いので使用しないでください。
さあ、これで準備ができました。あとは生きものを入れるだけです。でも、ちょっと待ってください。飼ってみたいからといって、何でもかんでも入れてはいけません。生きものの数、大きさ、そして種類の組み合わせをよく考える必要があり、ます。次を目安にしてください(右下の写真の容器の場合):力二類(2個体)、ヤド力リ類(5個体)、巻貝(3個体)、魚類(3個体)。いずれも小型のものを、大きさを揃えて入れます。力二やヤド力リでは、大きさに差があると、小型の個体は大型の個体に食べられてしまいます。なお、ヤド力リと巻貝は食べ残しの餌や、コンテナ表面に生えてくる藻類を掃除してくれるので、入れておくと便利です。海藻は水質悪化の原因となるので、入れないでください。
餌と普段の手入れは次のとおりです。餌は金魚用のフレーク状の餌を与えます。日に1~2回、5分程度で食べ切る分量を与えます。多すぎると水質が悪化します。水は、1~2週間に1度交換してください。その際、生きものと石をすべて取り出し、砂をかき混ぜながら5~6回、水道水でよく洗います。最後に、新しい人工海水を入れ、生きものと石を戻します。なお、死んでしまった生きものは、すぐに取り除いてください。
最後にお願いです。もし飼い続けることができなくなったら、元の生息場所へ戻してあげてください。
人によくなれるアゴハゼ
掃除の達人ホンヤドカリ
筆者の自宅における飼育状況。コンテナ( D27×W36×H14cm)にコシダカガンガラ、ホンヤドカリ、ヒライソガ二、バフンウ二、ヒラムシ類、アゴハゼ、ヒメハゼ、ナベカなどが入っている