Q.光るミミズがいるって本当?【レファレンスQandA】
動物担当 山田量崇
2007年もそろそろ終わりを告げようとしている年の暮れに、新聞社の方から驚くべき情報が入ってきました。阿南市で光るミミズを発見したというのです。「本当にそんなミミズがいるのか?しかも12月だと言うのに!」と半信半疑で、まだ生きているというそのミミズを貰(もら)いに車を走らせました。現場に着いてさっそく見てみると、何のことはないただのミミズでした(図1)。発見時の様子を詳(くわ)しく聞くと、どうやら明け方に散歩している時に道の上て、光っていたそうです。私自身ミミズに関する知識が乏(とぼ)しいので、博物館へ持ち帰り色々と調べてみたところ、なかなか面白いことが分かってきました。
図1阿南市で発見されたホタルミミズ
光るミミズの正体とは?
まず調べたのは、本当に光るミミズがいるのかということでした。結果、あっさりとその存在が明らかになりました。光るミミズというのは、分類学的にナガミミズ目ムカシフトミミズ科に属する「ホタルミミズMicroscolex phosphoreus」という種でした。まさにその名のとおりです。『新日本動物図鑑(上)』(北隆館)によると「体長3~5㎝,体幅(たいふく)1~1.5mm、体節数74~76、環帯を除いて半透明で少しピンク色を帯び、さらに副毛が1体節に4対8本で背孔(はいこう)はない」などの特徴があるとされています。阿南市で見つかった個体も同じ特徴が見られました。世界中に広く分布し、日本では神奈川県で初めて発見されたのを皮切りに、各地から情報が多く寄せられているようて、す。実はそんなに珍しくないミミズだということが分かりました。
光るメカニズムは?
ホタルの発光には、 ルシフェリンとルシフエラーゼという物質が作用しており、お腹の先端付近にある発光器により光を放つことができます。一方で、ホタルミミズも同じ物質をもっていますが、発光のメ力二ズムがホタルとは全く異なリます。具体的に言えば、ホタルのように体内に発光器があるのではなく、体が刺激を受けたり傷つくことによって口や肛門(こうもん)などから発光物質が分泌(ぶんぴつ)されるというわけです。
謎に包まれたミミズ
ホタルミミズの文献を調べ ていると、その生態の多くは 謎(なぞ)に包(つつ)まれていることが分かりました。
1つ目は発見された時期です。阿南市での発見は12月下旬の真冬でした。生物の活動が衰(おとろ)えるこの時期に見つかったのは単なる偶然ではないようで過去の多くの記録も12~2月の真冬に見つかっているのです。なぜ真冬なのでしょうか?一説には、ちょうどこの時期に体長が3cmほどになり、雨上がりなどに地表面に姿を現すことが多いため、目撃例もあるのではないかと考えられています。
2つ目はその分布域です。ホタルミミズは現在世界各地で確認されています。日本でも発見が相次いでいるわけですが、このミミズの原産地が南米で、日本にもともといなかったということを考えると、日本での分布に疑問が出てきます。移動能力に乏しいミミズが分布を拡げる理由として、人の手によって士と一緒に運ばれることが第一に挙げられます。しかしそれだけでは説明がつきません。果たして日本のホタルミミズと外国のホタルミミズは同じ種なのでしょうか?
今回徳島県から初めて発見されたホタルミミズですが、まだまだ情報が少なく謎に包まれています。その謎が解き明かされれば、意外と身近な生き物だったりするかもしれません。