博物館ニューストップページ博物館ニュース079(2010年6月25日発行)アリス、答礼人形「ミス徳島」(079号表紙)

アリス、答礼人形「ミス徳島」【表紙】

アリス(神山町神領小学校所蔵)、答礼人形「ミス徳島」(アメリカ合衆国ノースウェスト芸術文化博物館所蔵)

歴史担当 長谷川賢二

1920年代、移民問題を中心に日本とアメリカの溝が深まりました。その状況に胸を痛めたシドニー・ルイス・ギューリック(1860~1945)が中心となり、全米48州から集められた「青い目の人形」が友情と平和の使者として日本に贈られました。1927年、到着した人形は全国に配られ、人気者になりました。徳島県では現在、アリスという名の人形が1体だけ残っています。

人形の受け入れの中心となったのは、実業家・社会事業家だった渋沢栄一(1840~1931)でした。また渋沢がまとめ役となり、「青い目の人形」のお礼として58体の答礼人形がアメリカへ旅立っていきました。「ミス徳島」もその1体です。

1930年代になると日本は戦争に突入し、1941年にはアメリカなどとも戦うことになりました。そのため、「青い目の人形」は敵国の人形として扱われ、多くが失われました。互いに人形たちを忘れかけていた時期もあり、現在日本には約300体、アメリカには44体の人形が確認されるだけです。アリスもミス徳島も貴重な歴史の証人です。

特別陳列「海を渡った人形と戦争の時代」では、「ミス徳島」が20年ぶりに里帰りし、アリスをはじめ、四国に残る「青い目の人形」の一部とともに展示されます。人形たちの果たした役割を知るとともに、平和の意義を改めて考える機会となれば幸いです。

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