特定外来生物に注意!! セアカゴケグモとアルゼンチンアリ【野外博物館】
動物担当 山田量崇
今年の夏、徳島県で特定外来生物のセアカゴケグモとアルゼンチンアリが相次いで発見されました。もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生き物のことを『外来生物』と言います。外来生物のうち、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼすおそれがあるものの中から『特定外来生物』が指定されます。それらについては、飼育、栽培、保管及び運搬、輸入、野外へ放つ、植える及びまくことが原則的に禁止されています。ここでは、徳島から新たに見つかった2 種の特定外来生物にスポットを当てたいと思います。
セアカゴケグモ
2010年7月末、鳴門市里浦町の大手海岸から毒性の強いセアカゴケグモが発見されました(図1)。徳島県からは初めて、四国からは香川県坂出市・丸亀市に次いで3箇所目の発見です。
本種は、1995年に大阪府高石市で発見された後、近畿一円に広まりました。本来の分布域は熱帯アジア、オーストラリアなどですが、これらの地域から船の積み荷やコンテナに付いて日本へ侵入したと考えられています。日本での生息場所は、車や人の出入りがある駐車場周り、側溝(そっこう)、コンクリート製のブロックや建築資材のすき間などです。大手海岸にはセアカゴケグモが好むとされる環境が少ないものの、よく調べてみると発泡スチロールや堤防の水抜き穴、防砂(ぼうさ)用ネットの柵(さく)などに潜(ひそ)んでいる様子が確認されました。攻撃的なクモではありませんが、万が一咬(か)まれた場合、局所の痛みや発熱などの症状が出るようです。数時間から数日で症状は軽減(けいげん)しますが、医療機関へ相談することをおすすめします。
図 1 卵のうを抱えるセアカゴケグモのメス
アルゼンチンアリ
2010年9月に徳島市津田海岸町にてアルゼンチンアリの生息が確認されました(図2)。四国では初めての発見です。1990 年代初めに中国地方で発見され、港の周辺など海外との接点がある場所を中心に徐々に分布が拡がっていきました。
アルゼンチンアリはその名のとおり南米原産(げんさん)ですが、世界各国へ侵入し猛威(もうい)をふるっています。屋内に侵入して住民の日常生活に支障をきたすほか、侵入・定着している地域では在来のアリ類を駆逐(くちく)してしまうなど生態系への影響が懸念されているのです。体長が2.5~3ミリ程度と小さい上に、一見すると他のアリとよく似ているため、一般の方が本種を見分けるのは容易ではありません(図3)。また、人への直接的な被害がない場合、注意が散漫(さんまん)になりがちです。しかし、IUCN(国際自然保護連合)の「世界の侵略的(しんりゃくてき)外来種ワースト100」に選定されていることからも、本種がいかに深刻な害虫であるかが伺えます。
図 2 アルゼンチンアリの行列
図 3 アルゼンチンアリ(側面)
2010年は第10回目の生物多様性条約締約国(ていやくこく)会議(COP10)が行われた年です。今まさに世界中の人々が生き物に注目している時です。今一度、身の回りの生き物たちに目を配ってみてはいかがでしょうか。