博物館ニューストップページ博物館ニュース086(2012年3月25日発行)フランスのジュラ紀・白亜紀層見学旅行記(086号CultureClub)

フランスのジュラ紀(き)・白亜紀層(はくあきそう)見学旅行記【CultureClub】

地学担当 辻野泰之

2010年8月30日から9月3日にかけて、フランス中東部ディジョン市にあるブルゴーニュ大学において、第8回国際頭足類(とうそくるい)シンポジウムが開催(かいさい)されました。「頭足類」というのは、タコやイカのグループのことで、オウムガイや絶滅(ぜつめつ)生物のアンモナイトなどもこの仲間に含まれます。シンポジウムでは、世界中の「頭足類」の研究者が集まり、最新の研究成果が発表されました。このシンポジウム終了後には、フランス中東部から南東部にかけてのアンモナイトなどの化石を含む地層の見学会が催(もよお)されました。私はシンポジウムおよび地層見学会の両方に参加しましたが、地層見学会で印象に残ったいくつかの見学地についてここで紹介したいと思います(図1)

図1 見学したフランス各地の地層

図1 見学したフランス各地の地層

1. ベルモン=ダゼルグ砕石場(さいせきじょう)

フランスの第二の都市であるリヨン市郊外(こうがい)にある砕石場です(図2)。砕石場にはジュラ紀前期から中期(約1億8000万~1億7000万年前)にかけての地層が広く露出(ろしゅつ)しており、泥灰岩層(でいはいがんそう)にはアンモナイトや二枚貝などの化石を多く含みます(図3)。保存の良い化石が多く産出するため、地元の化石愛好家たちも訪れ、熱心に化石を採集しています。地層は軟(やわらか)く、小さなハンマーで簡単に化石を掘り出すことができます。小さなアンモナイトであれば、地層から抜け落ちたものを簡単に拾うこともできました。

図2 ベルモン=ダゼルグ砕石場の様子

図2 ベルモン=ダゼルグ砕石場の様子

図3 泥灰岩中に含まれるアンモナイト

図3 泥灰岩中に含まれるアンモナイト

2. ディーニュ=レ=バン市にあるアンモナイト密集層

フランス南東部アルプ=ド=オート=プロバンス県ディーニュ=レ=バン市にはアンモナイトを大量に含んだ地層が道路のすぐ横に露出しています。この地域一体は、世界ジオパークに指定されており、アンモナイト密集層の露頭(ろとう)も保護されています。「ジオパーク」とは、ユネスコの支援のもとに学術上重要な地質や地形などを自然公園として認定して、その地域の保全や教育、観光などに取り組むプロジェクトのことです。最近、高知県の室戸(むろと)半島も世界ジオパークに認定されました。
アンモナイト密集層は、ジュラ紀前期(約1億9500万年前)のもので、地層の表面(約15×15m)には、数百個のアンモナイトを見ることができます(図4、5)。現在、地層は急角度に傾いていますが、ジュラ紀当時、地層の表面である海底面には、数多くのアンモナイトの殻(から)が横たわっていたと想像できます。

図4 壁一面に数多くのアンモナイトが含まれる

図4 壁一面に数多くのアンモナイトが含まれる

図5 地層表面の拡大

図5 地層表面の拡大

3. 白亜紀(はくあき)バレミアン期の模式層(もしきそう)

「白亜紀」というのは、約1億4550万年前から6550万年前までの時代ですが、白亜紀はさらに細かく12の時代に区分されています。たとえば、白亜紀の中のひとつの時代に「コニアシアン期」という時代がありますが、これはお酒のコニャックで有名なフランス・コニャック地方の地層を基準に名づけられました。このように、時代の基準となる地層を「模式層」といいます。地質学はヨーロッパを中心に発展した学問ですので、それぞれ時代の「模式層」は、ヨーロッパ各地に点在しています。
この見学会で訪れたのは、フランス南東部のバレーム村近くにある約1 億3000万年前の白亜紀バレミアン期の模式層です(図6)。地層は、道沿いに100m以上に連続して露出しており、クリーム色の石灰岩(せっかいがん)と黒色の泥灰岩が互層(ごそう)しています。また、石灰岩のところどころにアンモナイトなどの化石が含まれていました(図7)。「模式層」ということもあり、地層は保護されており、ハンマーで地層を崩く ずして化石を採集することはできませんでしたが、露頭の下に落ちている化石のいくつかを採集することができました.

図6 白亜紀バレミアン期の模式層

図6 白亜紀バレミアン期の模式層

図7 バレミアン期の模式層中のアンモナイト(矢印)

図7 バレミアン期の模式層中のアンモナイト(矢印)

4. ストロマトライト露頭

フランス南東部・バレーム村近くにあるジュラ紀前期(約1億8000万年前)の石灰岩中には、バスケットボールぐらいのサイズのストロマトライトの化石が多く含まれています(図8)。ストロマトライトとは、微生物の藍藻類(らんそうるい)と泥や砂などの堆積物(たいせきぶつ)が何層にも積み重なってドーム型の構造をつくっているものです。藍藻類は、光合成によって酸素を発生させます。ストロマトライトは、先カンブリア時代(約27億年前から6億年前)には世界中の水域に見られ、地球に大量の酸素を供給しました。しかし、先カンブリア時代末ごろから、その数を減らし、現在では、オーストラリアなどの限られた地域でしか見ることができません。

図8 石灰岩中のストロマトライト

図8 石灰岩中のストロマトライト

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