博物館ニューストップページ博物館ニュース086(2012年3月25日発行)Q,宍喰では8月にひなまつりをするって本当ですか?(086号QandA)

Q,宍喰(ししくい)では8月にひなまつりをするって本当ですか?【レファレンスQandA】

民俗担当 庄武憲子

ひなまつりといえば、3 月の節句(せっく) に行うもので すが、海陽町(かいようちょう)宍喰では、古くから八朔(はっさく)の日(旧暦(きゅうれき)の8月1日)にひなまつりをするとされています。

1818年に記された『諸国風俗問状御答書宍喰村々(しょこくふうぞくといじょうおこたえがきししくいむらむら)』には「当所の儀三月に雛祭仕らず、八朔に雛祭仕候、供物生菓子干菓子餅なども相供親類の間雛祭の祝儀雛の供物等贈申候、三月に雛祭仕らず、八朔に祭り申儀何故の儀哉相分り申さず、古来より仕来にて御座候」とあり、理由はわかりませんが、宍喰では昔から3月ではなく、八朔にひなまつりをしていたことが確認できます。

現在でも、宍喰では女の子の初節供を迎(むか)える家々を中心に、八朔にひな人形を飾りひなまつりをしている所があります(図1)。女の子のために調(ととの)えられたひな人形を飾(かざ)り、その前に季節の果物のほか、「八朔羊羹(ようかん)」(図2)または「もみあげ」(図3)と言う、米粉(こめこ)でつくったお菓子(かし)をお供(そな)えします。かつては、子どもたちはこの「羊羹」「もみあげ」を遊山箱(ゆさんばこ)に入れて配りあったということです。

図1 宍喰字久保での八朔のひなまつり(2011年8月29日)ひな飾りの前に八朔羊羹のほかスイカ、モモの夏季の果物が供えられている

図1 宍喰字久保での八朔のひなまつり(2011年8月29日)ひな飾りの前に八朔羊羹のほかスイカ、モモの夏季の果物が供えられている

図2 海陽町内で販売されている「八朔羊羹」

図2 海陽町内で販売されている「八朔羊羹」

図3 宍喰字久保で八朔にひな人形の前に供えられた「もみあげ」。自宅で作ったもの

図3 宍喰字久保で八朔にひな人形の前に供えられた「もみあげ」。自宅で作ったもの

徳島県内では、宍喰のほかに八朔にひなまつりをするという所は聞かれないので、とても特徴(とくちょう)的な習わしとなっています。ただ、日本全国を見回すと、山口県の柳井市(やないし)や、香川県三豊市(みとよし)など瀬戸内海を中心とした地域で、八朔にひなまつりをする所が多く見られます(図4)。宍喰をはじめ、日本各地に八朔にひなまつりを行うとする所が、なぜあるのかについては、現在の所よくわかっていません。

図4 八朔に人形・馬などを作る、飾る事例が報告されている地域

図4 八朔に人形・馬などを作る、飾る事例が報告されている地域

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