博物館ニューストップページ博物館ニュース088(2012年9月15日発行)天海山(てんかいざん)の二枚貝化石モノチス(088号野外博物館)

天海山(てんかいざん)の二枚貝化石モノチス【野外博物館】

地学担当 辻野泰之

那賀町(なかちょう)(旧・木頭村(きとうそうん))の小見野々(こみのの)ダムの北方にある天海山(てんかいざん)(標高1085m)からは、二枚貝の化石が産出するととが、古くから知うれています(図1)。初めて学術論文で紹介されたのは、1911年のことで、東京帝国大学の横山又次郎教授(よこやままたじろうきょうじゅ)が「地質学雑誌(ちしつがくざっし)」に旧・木頭村から採集された三畳紀(さんじょうき)の二枚貝化石について報告しています。この発見1こより徳島県にも三畳紀(約2億5000万年~約2億年前)の地層が分布していることが明らかになりました。
天海山で主に産出するのは、モノチスと呼ばれる海生(かいせい)の二枚貝化石です(図2)。殻(から)は薄(うす)く、半円形をしており、強い放射状の肋(ろく)があるのが特徴(とくちょう)です。モノチスは、世界中の三畳紀後期(約2億1000万年~約2億年前)の地層から産出するととから、三畳紀後期の示準化石(しじゅんかせき)になっています。示準化石とは、その化石が産出することで、地層が堆積(たいせき)した時代を決定することができる化石のことを言います。

図 1 那賀町(目-木頭村)にある天海山周辺の地図

図 1 那賀町(目-木頭村)にある天海山周辺の地図

図 2 天海山の三畳紀層から産出したモノチス

図 2 天海山の三畳紀層から産出したモノチス

昨年2011年に、地質調査の一環(いっかん)で、徳島 化石研究会(とくしまかせきけんきゅうかい)の方に案内してもらい、天海山のモノチスの産地状況について確認を行いました。案内していただいた徳島化石研究会の方も久しく産地に訪れておらず、地形図で産地へのルートを確認しつつの調査になりました。以前は、山に入る人が多かったため、林道は比較的(ひかくてき)整備されていたらしいのですが、近年では、あまり林道も使われなくなり、一部の場所では草木を押し退けての探索(たんさく)になりました。片道4時間近くかかりましたが、天海山の化石産地にたどり着くことができました(図3)。産出量は決して多くはありませんが、砂岩や泥岩(でいがん)中に含(ふく)まれているモノチスを確認できました(図4)。

図3天海山の化石産地の様子

図3天海山の化石産地の様子

図4砂岩や泥岩中に含まれるモノチス

図4砂岩や泥岩中に含まれるモノチス

奇遇(きぐう)にも、私たちが天海山を訪れたのは、初めて天海山から二枚貝化石が報告されてから、ちょうど100年にあたる年でした。

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