博物館ニューストップページ博物館ニュース102(2016年3月25日発行)博物館資料と市町村合併(102号情報ボックス)

博物館資料と市町村合併【情報ボックス】

民俗担当 磯本宏紀

「平成の大合併」と呼ばれた市町村合併が一段落し、10年近くが過ぎようとしています。徳島県でも合併による新市、新町が誕生したのは記憶に新しいことです。合併にはメリット、デメリットの両面があることはすでに周知のことと思います。いまだ多方面に合併の影響があるなかで、市町村の博物館・資料館や教育委員会等が所蔵する博物館資料も無関係ではないようです。博物館・資料館や教育委員会等の公的機関が所蔵する資料ですら、その設置主体や担当の変更により、万全な状態を確保できなくなるケースがあることを耳にします。

現在徳島県内にある博物館・資料館等の多くは、「平成の大合併」以前の市町村によって設置された施設です。こうした施設は、各分野の博物館資料を収集し、保管してきました。それが、市町村合併にともなって新市町の範囲までカバーエリアを広げることになったり、合併先の他市町村の資料を引き継ぐことになったりと、多かれ少なかれ、設置自治体の変更に合わせて、博物館資料等も再整理、移動を行う必要が生じているようです。

先日、海陽町教育委員会による所蔵資料の移動作業に立ち合う機会がありました。海陽町は、旧海南町、旧海部町、旧宍喰町が合併して2006年3 月に誕生した町です。もともと旧海南町には学芸員を配置する博物館があり、博物館資料を収集・保管していたほか、旧海部町、旧宍喰町も町教育委員会による資料の収集、保管をしてきました。今回は、旧宍喰町教育委員会が収集した民具等(大敷網(おおしきあみ)関係漁具ほか)を収蔵する倉庫の解体にともない、資料の移動を余儀なくされたのです。

海陽町教育委員会とともに資料の移動先について検討した結果、町内の休校中の学校舎や幼稚園舎に仮保管することが可能だということがわかり、ひとまず移動の目途が立ちました。なんとか資料廃棄という最悪のシナリオは回避できました。休校中の学校舎や園舎での保管は、あくまで仮置きであり、恒久的保管を担保するものではありませんが、まずは廃棄されることなく、仮の保管場所に移動することができそうです。この仮置きの期間にこれらの資料が再整理され、データベース化され、活用され、次の本格的な収蔵場所への移動が可能になることを願ってやみません。

図 1 移動させるため 1カ所に集められた資料(海陽町教育委員会蔵)

図 1 移動させるため 1カ所に集められた資料(海陽町教育委員会蔵)

図 2 休校中の小学校の空き教室に仮置きされた資料(海陽町教育委員会蔵)

図 2 休校中の小学校の空き教室に仮置きされた資料(海陽町教育委員会蔵)

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