博物館ニューストップページ博物館ニュース112(2018年9月15日発行)Q.中央構造線の活断層がよく見える場所を教えてください。(112号QandA)

中央構造線の活断層がよく見える場所を教えてください。【レファレンスQandA】

地学担当 中尾賢一

中央構造線活断層帯(ちゅうおうこうぞうせんかつだんそうたい)ぞいには、断層運動によってできた崖(がけ)(低断層崖(ていだんそうがい))や屈曲(くっきょく)した河川、三角末端面(さんかくまったんめん)などがはっきりと現れている場所が多くあります。三好市池田の市街地には、断層露頭(ろとう)はありませんが、みごとな断層変位地形が見られます。

図1 東から見た池田地区(消防防災ヘリで撮影)。池田断層(矢印)に沿って、低断層崖(市街地の崖)と三角末端面(断層によって切り取られた尾根の断面)が見られる。

図1 東から見た池田地区(消防防災ヘリで撮影)。池田断層(矢印)に沿って、低断層崖(市街地の崖)と三角末端面(断層によって切り取られた尾根の断面)が見られる。

池田の市街地は、吉野川が2万数千年前につくった低位段丘面(ていいだんきゅうめん)の上に広がっています。池田高校のある北側の高台と、南側の平坦面(へいたんめん)の間にある直線的な崖が、中央構造線池田断層(いけだだんそう)がつくる低断層崖です。東部では低断層崖の高さ(比高)が約20m、西部では約30mあり、以前は断層破砕帯(はさいたい)が見えていたそうです。断層の北側には、薄い礫層(れきそう)の下に和泉層群(いずみそうぐん)が、南側では厚い第四紀堆積物(たいせきぶつ)の下に三波川結晶片岩(さんばがわけっしょうへんがん)が確認されているので、この場所では、地質境界としての中央構造線と、活断層としての中央構造線が一致しています。段丘面の西側では、吉野川の侵食崖(しんしょくがい)が右横に約200mずれています。仮に1回で水平方向に10m(右横ずれ)、垂直方向に1m(北側隆起(りゅうき))変位させる地震が約1000年に一度の割合で起きたと仮定すると、だいたい20~30回くらいの断層運動の蓄積(ちくせき)を見ていることになります。

段丘の南側には丸山(まるやま)や、その南側のシンヤマなどの丘陵があります。これらの丘陵地をつくる和泉層群は、北側から地すべりによって移動してきた岩体です。この崩ほう壊かいで吉野川が一時的に塞(ふさ)がれ、せき止め湖が出現したのち、現在の位置で決壊(けっかい)したと考えられます。そのため、池田の市街地周辺では、吉野川の本流は中央構造線の北側を流れています。吉野川では、このような場所は他にはありません。

図2 池田高校の高台からみた市街地と低断層崖

図2 池田高校の高台からみた市街地と低断層崖

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