博物館ニューストップページ博物館ニュース113(2018年12月1日発行)徳島県勝浦町で恐竜化石含有層と新たな恐竜化石などを発見(113号速報)

徳島県勝浦町で恐竜化石含有層と新たな恐竜化石などを発見【速報】

地学担当 辻野泰之

徳島県勝浦町(かつうらちょう)には、白亜紀前期(はくあきぜんき)(約1億3000万年~約1億年前)の地層(ちそう)である物部川層群(ものべがわそうぐん)が分布しています。その一部は、陸域(淡水(たんすい)~汽水(きすい)の環境)で堆積した地層(約1億3000万年前)であり、以前からシダ植物や貝類などの化石の産出が知られています。1994年、この地層から四国初の恐竜化石である鳥脚類(ちょうきゃくるい)イグアノドン類の歯が発見されました。さらに2016年には、県内2例目となる恐竜化石の竜脚類(りゅうきゃくるい)ティタノサウルス形類の歯が発見されました。この2例目の発見をきっかけに、徳島県立博物館は、福井県立恐竜博物館および県内の化石愛好家らの協力を得て、約2年間、新たな恐竜化石の発見のための調査を続けてきました。

過去に勝浦町で発見された2点の恐竜化石は、いずれも地層から抜け落ちた岩石中から見つかったもので、恐竜化石を含む地層の特定はできていませんでした。しかし、地道な調査を続けたところ、ワニ類の歯(図1)やカメ類(スッポン類など)の甲羅(こうら)(図2)、硬鱗魚(こうりんぎょ)(アミアやガーなどの仲間)のウロコ、淡水生サメ類の歯などの脊椎動物(せきついどうぶつ)化石を比較的多く含む層を発見しました。同様の脊椎動物化石は、恐竜化石産地として有名な福井県勝山市(かつやまし)や石川県白山市(はくさんし)などにおいても、恐竜化石と一緒に発見されており、恐竜化石を見つける際の目印になっています。そのため、この層を丹念(たんねん)に発掘(はっくつ)すると、今年2018年4~5月にかけて、新たな恐竜化石(竜脚類ティタノサウルス形類の歯)を3点発見しました(図3)。さらに恐竜の骨質化(こつしつか)した腱(けん)化石2点も地層中から発見できました(図4)。特定の層から恐竜化石をはじめとする多数の脊椎動物化石を発見できたことから、この層を恐竜化石含有層(きょうりゅうかせきがんゆうそう)(いわゆるボーン・ベッド)であると判断しました。

図1 白亜紀前期のワニ類の歯化石

図1 白亜紀前期のワニ類の歯化石

図2 白亜紀前期のカメ類(スッポン類)の甲羅化石

図2 白亜紀前期のカメ類(スッポン類)の甲羅化石

図3 竜脚類ティタノサウルス形類の歯化石(左)と生体復元図(右上)

図3 竜脚類ティタノサウルス形類の歯化石(左)と生体復元図(右上)

図4 恐竜の骨質化した腱化石

図4 恐竜の骨質化した腱化石

徳島県立博物館を中心とした研究チームは、今後もこの恐竜化石含有層の発掘調査を続ける予定です。今後の発掘調査次第では、将来、「恐竜王国トクシマ」と呼ばれる日が来るかもしれません。

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