2019年度の恐竜化石含有層(ボーンベッド)の本格発掘調査を実施【速報】
地学担当 辻野泰之
徳島(とくしま)県勝浦(かつうら)町には、白亜紀(はくあき)前期(約1億3000万年前)の汽水(きすい)~淡水(たんすい)(大きな河川の河口付近)の環境で堆積(たいせき)した地層が分布しています。2018年春、徳島県立博物館をはじめとする調査チームは、恐竜化石を含む地層(ボーンベッド)を勝浦町で発見しました。同年冬(11月末~12月中旬)には、手作業による緊急発掘調査を実施し、恐竜化石(獣脚類(じゅうきゃくるい)の脛骨(けいこつ)や竜脚類(りゅうきゃくるい)の歯)などの多数の脊椎(せきつい)動物化石を発見しました。しかし、発掘現場は、急峻(きゅうしゅん)な山の斜面にあり、落石や落盤の危険性もあることから、これ以上の手作業による発掘は難しいと判断し、約2週間で調査を終えました。
2019年度の発掘調査は、安全に、そしてボー ンベッドを大きく露出(ろしゅつ)させるため、重機(じゅうき)(小型ショベル力ー)を導入した発掘調査を10月末~12月末まで約2ヵ月間実施しました(図1)。発掘現場は、険(けわ)しい山の中にあり、重機を発掘現場まで移動させるのに1ヵ月間近くかかったことから、実質的な発掘調査の開始は、11月末からになりました。
図 1 重機(小型シ ョベルカー)を使ったポーンベッドの鋪
図 2 調査チームによる発掘調査の様子
図 3 2019年度の調査で発見された肉食恐竜 (獣脚類)の歯(歯の長さ 約 4cm)
発掘調査は、福井県立恐竜博物館の研究員や地元の化石愛好家、古生物学を専門とする大学院生など、総勢約30人の方々に参加していただきました(図2)。発掘調査を開始すると、力メの甲羅(こうら)や淡水生サメの歯などの化石は見つかりましたが、恐竜化石は、なかなか発見できませんでした。しかし、12月9日に発掘調査を請(う)け負(お)っている民間会社の作業員の方が、偶然割った岩石から、肉食恐竜(獣脚類)の完全な歯を発売しました(図3)。
肉食恐竜の歯が産出した場所は、私たちがこれまで、認識していたボーンベッドとは異なる地層からであり、恐竜化石を含む地層は、私たちが思っているより、大きく広がっている可能性も出てきました。今後、より大規模な発掘調査をすすめれば、より多くの、また、新たな種類の恐竜化石が、勝浦町の恐竜化石発掘現場から発見できるかもしれません。