博物館ニューストップページ博物館ニュース136(2024年9月15日発行)Q.どうやれば紫外線写真を撮影できますか?(QandA)

Q.どうやれば紫外線写真を撮影できますか?【レファレンスQandA)

植物担当:小川 誠


A.紫外線は人の目で見ることのできない光です。鳥や昆虫の中には紫外線を見ることのできるものがいて、モンシロチョウはオス・メスの違いを紫外線で見分けています。この紫外線を花の蜜のありかを示すのに利用し、昆虫を誘導している植物があります。私たちも紫外線を撮影することは可能ですので、その撮影方法を紹介します。

フィルムカメラでの撮影

フィルムカメラでは紫外線をファインダーで確認できず、特殊で高価なレンズを用いなければならないため、一般の人には撮影は困難です。

改造デジタルカメラでの撮影

デジタルカメラで紫外線写真を撮影するために、カメラを改造する方法が行われています。カメラ本体には紫外線カットフィルターが装着されていて、不要な光が入らないようになっています。そのフィルターを取り除いて、紫外線がセンサーに届くようにします。あとはレンズの先端に、紫外線のみを通すフィルターを取り付けると、紫外線写真を撮影することができます(図1右)。紫外線を反射するところが白く、吸収するところが黒く写っています。ただし、カメラを改造する際に、専門の業者に依頼する必要があるので一般的ではありません。

非改造デジタルカメラでの撮影

私は改造していないデジタルカメラで紫外線写真を撮影できないか試してみました。カメラ本体の紫外線カットフィルターはわずかに紫外線を通しています。そのため、シャッタースピードを長くして少量の紫外線をとり込もうと試みました。
撮影にはCANON  EOS  R10という一般的なカメラを使いました。EF-S60mm マクロのレンズを付け、その先端に紫外線のみを透過するフィルターを取り付けます。撮影時には室内を暗闇にし、三脚を使い、紫外線LEDライトを多めに6個用いました。リモート撮影をするソフト(EOS Utility)によりパソコンの画面でも、花の濃淡が確認できます(図2)。撮影した写真は図3のよ
うになり、改造したカメラと遜色(そんしょく)なく、蜜がある花の中心部が黒く示されています。
他のメーカーのカメラでも、同様に非改造で紫外線写真が撮影できました。ただ、撮影データを見ると、シャッタースピードが長くなるため、無風の室内でリモート撮影し、ブレに気を付ける必要があります。このようにして、非改造のカメラで紫外線写真を撮ることができました。

図1 紫外線用に改造したカメラ(CANON EOS 90D EF-S60mmマクロ)で撮影したアブラナ。左:通常光(ISO1600、F16、1/20秒)、右:紫外線( ISO3200、F16、1/3秒)

図1 紫外線用に改造したカメラ(CANON EOS 90D EF-S60mmマクロ)で撮影したアブラナ。左:通常光(ISO1600、F16、1/20秒)、右:紫外線( ISO3200、F16、1/3秒)

図2 非改造のカメラ(CANON EOS R10 EF-S60mm マクロ)でEOS Utilityを使い紫外線写真のリモート撮影をしている様子。

図2 非改造のカメラ(CANON EOS R10 EF-S60mm マクロ)でEOS Utilityを使い紫外線写真のリモート撮影をしている様子。

図3 非改造カメラ(CANONEOSR10EF-S60mmマクロ)で撮影したアブラナ。左:通常光(ISO800、F16、1/45秒)、右:紫外線(ISO3200、F16、15秒)

図3 非改造カメラ(CANONEOSR10EF-S60mmマクロ)で撮影したアブラナ。左:通常光(ISO800、F16、1/45秒)、右:紫外線(ISO3200、F16、15秒)

 

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