博物館ニューストップページ博物館ニュース020(1995年9月10日発行)Q.博物館の展示の中でラベルに〔複製〕と・・・(020号QandA)

Q.博物館の展示の中でラベルに〔複製〕と書かれたものがありました。複製ってどんなものですか?【レファレンスQ&A】

保存科学担当 魚島純一

Q.博物館の展示の中でラベルに〔複製〕と書かれたものがありました。複製ってどんなものですか?

A.徳島県立博物館では、実物資料と複製資料をはっきりと分けるために、複製資料の展示ラベルには資料名の後ろに〔複製〕と表示しています。複製資料は、実物資料から忠実に型取(かたど)りして、合成樹脂(ごうせいじゅし)などを使って実物とまったく同じ型をつくり、精密に彩色した見かけはまったく実物と同じものです。「レプリカ」ということばの方がなじみがあるかも知れません。
ここでは重要文化財(じゅうようぶんかざい)田村谷銅鐸(どうたく)の複製製作の写真をまじえて、レプリカをつくる手順について簡単に説明します。

まず、実物資料lこシリコンゴムという樹脂を塗って、実物資料の形や細かい文様、凹凸をすべてそのままコピーします。この作業の前に、実物資料を保護するために、表面に数ミクロン(1ミクロン=1000分の1ミリ)の厚さの金属の箔(はく)を賠り付け(写真1)、その上からシリコンゴムを塗ります(写真2)。これで、資料の雌型(めがた)ができるわけですが、シリコンゴムは柔らかく、それ自身では形が保てないため、シリコンゴムの上に石膏(せっこう)を塗ってシリコン型の形が崩れないようにします(写真3)。

写真1

写真1

写真2

写真2

写真3

写真3
こうしてできた雌型にプラスチックのような合成樹脂を流し込んで実物資料の立体コピーである雄型(おがた)をつくります。ちょうど、たい焼きをつくるのと同じような感じと思えばよいでしょう。
この雄型に、実物を見ながら細かい部分まで実物とまったく同じように色を付けて、レプリカが、完成します。
こんなふうにいうと、「なんだにせものか」とか「つくりもののことか」と思うかも知れませんが、レプリカはれっきとした“資料”なのです。
どのようなものでも展示することによって多かれ少なかれ色があせたり、材質そのものが傷んでしまいます。これを劣化(れっか)といいますが、劣化を防ぐために博物館などではレプリカを展示して、実物は温度や湿度が管理され、まったく光が当たることのない収蔵庫(しゅうぞうこ)で保管したりしています。

また、遠くの博物館にあったり、ひとつしかない貴重な資料でもレプリカがあれば実物とまったく同じものを見ることができるのです。
今度博物館の展示で〔複製〕という表示を見つけたら、一度じっくりと眺めてみてください。きっとレプリカが持つほんとうの価値がわかってくることと思います。

博物館では、普及行事として化石や土器の破片のレプリ力をつくる室内実習「レプリカづくり」を開催しており、毎年多くの方が参加されています。みなさんもぜひ参加して、一度自分の手でレプリカをつくってみてはいかがですか?

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