博物館ニューストップページ博物館ニュース025(1996年12月1日発行)18年ぶりに生息が確認されたスナヤツメ(025号速報)

18年ぶりに生息が確認されたスナヤツメ【速報】

動物担当 佐藤陽一

スナヤツメはヤツメウナギの仲間です。「ウナギ」という名が付いていますが、皆さんが蒲焼(かばや)きにして食べるウナギとは別ものです。それどころか、魚のグループに入れてもらえないことさえあります。どうしてかというと、口はあってもアゴがないからです。工ラ穴も普通の魚と異なり、眼の後ろに小さな丸い穴が7つ並んでいます。そのため目が全部で8つあるようにも見えるので「八つ目ウナギ」と呼ばれるようになりました。

図 1 スナヤツメ笠息地。小松島市田浦町。

図 1 スナヤツメ笠息地。小松島市田浦町。

 

この仲間は日本に全部で4種おり、それらのうち徳島県にはスナヤツメ1種だけが生息しています。文献の記録から、かつては吉野川をはじめ、勝浦川や那賀川など、県内に広く分布していたことがうかがわれます。当館の最近の調査でも、県南の海部川水系で生患を確認しました。
ところが、県内でもっとも多く生息していたと思われる紀伊水道側からは、1978年を最後にばったりと記録がとだえていました。そこでこの地域のスナヤツメが本当に絶滅したのかどうか確認するために、この夏、かつての生息地を再調査しました(図1)。炎天下、汗だくになりながら、いそうな場所をタモ網であさっていましたが、ちっとも採れません。あきらめかけた頃、一緒に調査していたS氏が「採れたー!」と叫んだのでかけ寄ってみると、確かに10cmほどのスナヤツメが1尾採れているではないですか(図2、3)。この時は驚きました。何しろ本当にいるとは思っていなかったからです。この後、周囲をくまなく捜索(そうさく)したことは言うまでもありませんが、結局追加の個体は得られませんでした。

 

図 2 採集されたスナヤツメ

図 2 採集されたスナヤツメ。ふだんは砂の申にもぐっていて、姿をみせない。

 

図 3 スナヤツメの頭部。

図 3 スナヤツメの頭部。まだ幼生なので、眼は皮下に埋没している。 7つの工ラ穴がみえる

 

皆さんは海部川水系でも確認されているのに、そんなに驚くようなことかとお思いになるかもしれませんね。ところが現在、四国でスナヤツメが確実に生息することがわかっているのは、先の海部川と今回確認した揚所のたった2力所だけなのです。スナヤツメという種の分布域はどうなっているかというと、国内では北海道から九州まで、国外では沿海州から朝鮮半島、中国北部におよんでいることから、一見絶滅の心配など無縁のように思えます。しかし近年、西日本における生息地は激減状態にあり、九州でも生息地は数力所となってしまいました。また、従来いわれてきたスナヤツメは、実は1種なのではなく、北日本を中心に分布するものと、南日本を中心に分布するものとは、遺伝的に隔離された別種であることがわかってきました。そういうわけで、南日本分布型のスナヤツメの、とくに近畿以西地域における絶滅の司能性はかなり高いといえるのです。

スナヤツメが生息するには、水質の良い水、軟泥の堆積する湧水地や淵、さらにすぐ近くに産卵場となる磯(れき)底の平瀬が必要です。このような場所は水質の汚濁、河川改修や圃場整備によって非常に少なくなりました。これが生息地減少の原因と考えられます。しかし、県内のほかの地践にもまだ生思しているのではないかと希望をもっています。もし情報をおもちの方はぜひご連絡ください。

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