博物館ニューストップページ博物館ニュース043(2001年6月25日発行)オホーツク海および牟岐沖産等甲殻類剥製(043号情報ボックス)

オホーツク海および牟岐沖産等甲殻類剥製【情報ボックス】

動物担当 田辺 力

徳島県立博物館では今年の5月に、牟岐町の浅田長治さんよりオホーツク海や牟岐沖等で採集された甲殻(こうかく)類の剥製(はくせい)を寄贈していただきました。約70種、210点の充実したコレクションです。これだけの甲殻類剥製コレクションはそうあるものではありません。寄贈していただいた剥製は機会をみて展示する予定です。

浅田さんはかつて蟹工船で働いておられ、作業のかたわら網にかかったカニ、エビ、フジツボなどを収集し剥製として保管しておられました。また、毎年、秋から春にかけては牟岐に帰郷され、その折りに牟岐沖の漁で網にかかったカニやエビなどを譲り受け、それらも同様に剥製にしてこられました。魚の剥製作りに興味を持たれたのがきっかけとなり、もともと好きであった甲殻類の剥製を始められたそうです。

剥製の技術はなかなか見事で、最初に実物を拝見させていたときは少々驚いたものです。甲殻類の剥製は足などが折れたりして破損しやすいのですが、浅田さんの作られた剥製は良い状態で保存されています。お話を伺ったところ、足の中にステンレスの針金を入れて補強されているということです。また、剥製を作るときはまずカニにホルマリンを注射するそうですが、捕れたてのカニは体が硬いので冷蔵庫に2-3日入れてから注射するとよい等、自ら考案された技術もお持ちです。カニのハサミや足の広げ方も絶妙で、なかなか美しいものです。浅田さんのお話をうかがっていると、生きものに深い愛情をお持ちであることがよく伝わってきます。その愛情が、剥製の出来の良さとなって表れているように感じました。

オホーツク海産の甲殻類は大型のズワイガニ、タラバガニ、アブラガニなどです(図1)。オホーツク海産の甲殻類の剥製が手に入る機会は稀であり貴重です。

図1 浅田長治さんと甲殻類剥製。浅田さんがお持ちなのはアフリカはモザンビーク沖産のハコエビ(左)とセミエビ(右)。浅田さんの後ろにあるのはオホーツク海産のズワイガニ(左上)、アブラガニ(左下および中央)、モザンビーク沖産大型イセエビ類(右)。

図1 浅田長治さんと甲殻類剥製。浅田さんがお持ちなのはアフリカはモザンビーク沖産のハコエビ(左)とセミエビ(右)。浅田さんの後ろにあるのはオホーツク海産のズワイガニ(左上)、アブラガニ(左下および中央)、モザンビーク沖産大型イセエビ類(右)。

牟岐沖の剥製は、ハサミが貝殻を割るために特殊化したカラッパ類(図2右上下)、艶(つや)やかな甲羅が特徴のマンジュウガニ類(図2中央上2匹)、長方形の形をしたセミエビ(図2左上)、甲らやハサミにのこぎり状のトゲのあるノコギリガニ(図3右下)、ガザミ類など約50種の甲殻類を含みます。これらの種類は沖合に生息するため、漁業関係者以外は通常見ることのできないものです。また、徳島県の甲殻類相の解明の点でも重要な資料です。

図2 牟岐沖産甲殻類剥製。左:上、セミエビ;下、アサヒガニ。中央:上、スベスベマンジュウガニ;中、アカマンジュウガニ;下、ウチワエビ。右:上、トラフカラッパ;下、ヤマトカラッパ

図2 牟岐沖産甲殻類剥製。左:上、セミエビ;下、アサヒガニ。中央:上、スベスベマンジュウガニ;中、アカマンジュウガニ;下、ウチワエビ。右:上、トラフカラッパ;下、ヤマトカラッパ

 

図3 牟岐沖産甲殻類剥製。左:上、トゲアシガニ;下、イシガニ。右:上、アカマンジュウガニ;下、ノコギリガニ。

図3 牟岐沖産甲殻類剥製。左:上、トゲアシガニ;下、イシガニ。右:上、アカマンジュウガニ;下、ノコギリガニ。

オホーツク海および牟岐沖産以外にもなかなか入手できないアフリカ、モザンビーク沖産のハコエビ等の剥製も寄贈していただきました。

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