博物館ニューストップページ博物館ニュース057(2004年12月1日発行)ムスタン~風の谷へ花々を求めて~(057号CultureClub)

ムスタン~風の谷へ花々を求めて~【CultureClub】

植物担当 茨木靖

図1からからに乾いた大地。沢筋だけに村が見える

図1からからに乾いた大地。沢筋だけに村が見える

昨年、海外学術調査に参加し、ヒマラヤの懐(ふところ)の国ネパールのムスタン地方の植物を調べに行ってきました。ここではムスタンの環境とそこで見られる花をいくつかご紹介します。

風のムスタンヘ

亜熱帯の町、ポ力ラから飛行機で30分。緑の森を越え、巨大なヒマラヤ山脈の谷をぬって、いよいよムスタンに入る切り立った谷聞を抜けた瞬間、あたりは一面の茶色い世界になってしまいました。まさに別世界。この地はインド風と呼ばれる強く乾いた風の影響で全土が力ラ力ラに乾いています(図1)。厳しい環境ですが、川沿いには人々がオオムギやソバを作って暮らしています(図2)。

とげだらけ

ムスタンの山を歩いてすぐに気付くのは棘(とげ)のある植物がとても多いということです。特に多いのがマメ科の力ラガナ(Calagana)の仲間(図3)。サボテンのような鋭い硬い棘がびっしり生えていて、さながら“針の山”です。この他、棘に覆(おお)われたバラ科(図的やメギ科の植物も多く見られました。

変わった形

厳しい乾燥と低温の影響か、中にはとても変わった形になった植物もあります。薄い酸素に息を切らせ4500mほどの頂きに立った時、まわりには、まるで月面墓地のような、半球形に縮まった植物たちが覆う奇妙な景観がありました(図5)。この他、植物体が縮まって玉状になったものなども見られました(図6)。

カル力~砂漠の中の花園~

力ラカラに乾いたムスタンですが、沢筋などには力ル力と呼ばれる湿地(図7)が広がっています。まさに砂漠のオアシスと言えましょう。サクラソウ属(図8)、シオガマギク属(図9)そして美しいランの仲間(図10)などが咲き乱れ、乾燥地の植物とはまるで遣うのに驚かされました。

こうして無事に調査を終え、たくさんの植物標本を得ることができました。現在データの整理中ですが、いずれ皆さんのお目にかけたいと考えています。

図2畑ではチベット系の人々がオオムギやソバを作って暮らしている。

図2畑ではチベット系の人々がオオムギやソバを作って暮らしている。

図3マメ科のカラガナ(Calagana)のなかま。まさに棘だらけ

図3マメ科のカラガナ(Calagana)のなかま。まさに棘だらけ

図4バラのなかま。非常に多く見られた。

図4バラのなかま。非常に多く見られた。

図5ナデシコ科のノミノツヅリのなかま。

図5ナデシコ科のノミノツヅリのなかま。
図6サクラソウ科のトチナイソウのなかま。

図6サクラソウ科のトチナイソウのなかま。


図7カルカで採集するシェルパ族のスタッフ。

図7カルカで採集するシェルパ族のスタッフ。
 

図8サクラソウのなかま。ヒマラヤには種類が多い。

図8サクラソウのなかま。ヒマラヤには種類が多い。
 

図9シオガマギクのなかま。これもヒマラヤには種類が多い。

図9シオガマギクのなかま。これもヒマラヤには種類が多い。

 

図10ウチョウランのなかま。カルカの中ではとても多かった。

図10ウチョウランのなかま。カルカの中ではとても多かった。

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