アマと魔除け【表紙】

民俗担当 磯本宏紀

日本列島各地には、海に潜って貝や海藻を採るアマと呼ばれる人びとがいます。図1は、かつて志摩(しま)の海女(あま)さんたちが頭にかぶって潜水漁(せんすいりょう)をしていたイソテヌグイです。「ドーマン(五芭星(ごほうせいドーマン(五芭星(ごほうせい)、セーマン(九字(くじ)セーマン(九字(くじ)) 」と呼ばれる印が紺色の糸で縫い込まれているのに気付きましたか?ほかにもいろいろな寺社の朱の印判が押されています。海女を海底に引きずり込む「トモ力ツギ」という妖怪(ようかい)に出逢(であ)わないため、魔除(まよ)けとしてこれらの印のついたテヌグイをかぶるのです。龍神さん(海神)の知らない文字だから魔除けの効果があるという伝承によるものです。

 

ほかにも、アワビを起こすために使うオオノミという道具がありますが、この道具の柄(図2・3)にもドーマンが見えます。また、福岡県宗像市鐘崎(むなかたしかねざき)の海女も、「大」という文字を縫い付けた「あたまかぶり」をかぶって海中に潜つでいました(図4)。

 

危険な海中で作業をしてきた人々の、自然への対応と、その心意(しんい)をうかがうことのできる資料です。これらの資料は企画展「海人(あま)の見た世界-知られざる伝統文化発見!-」で展示する予定です。

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