博物館ニューストップページ博物館ニュース065(2006年12月1日発行)チラノサウルス類の歯化石(065号館蔵品紹介)

チラノサウルス類の歯化石【館蔵品紹介】

地学担当 辻野泰之

恐竜についてそれほど詳しくない人でも、知っている恐竜の名前を挙げてくださいと言うと多くの人がチラノサウルスの名前を挙げるのではないでしょうか。それほど、チラノサウルスは有名で、最も人気のある恐竜だと思います。チラノサウルスは白亜紀(はくあき)後期(約6800~6500万年前)に北アメリ力に生息していた獣脚類(じゅうきゃくるい)と呼ばれる大型肉食恐竜の一種です。

徳島県立博物館の常設展示室にもチラノサウルス・レックスの全身骨格化石(複製)が展示されています(図1)。その他に当館にはチラノサウルス類の歯化石が数点収蔵されています。今回は、それらについて紹介します。

図 1 常設展示室にあるチラノサウルス・レックス の全身骨格(複製)

図 1 常設展示室にあるチラノサウルス・レックスの全身骨格(複製)

チラノサウルス類の恐竜はこれまでに少なくとも10数属(ぞく)が知られており、現在のところ当館に収蔵されている歯化石は、アルバートサウルス(図2)、ダスプレトサウルス(図3)、そしてチラノサウルス(図4)の3種類です。アルバートサウルス、ダスプレ卜サウルスは、ともにチラノサウルスと同じ北アメリ力で発見されています。しかし、チラノサウルスよりも古い地層から見つかることから、チラノサウルスよりもやや古い時代に生存していたことがわかっています。また、チラノサウルスが全長13m(こも達するのに対し、アルバトサウルス、ダスプレトサウルスは全長8~9mほどしかなく、チラノサウルスよりも小さめでした。しかし、これらは共通した歯の特徴を持っています。チラノサウルス類の恐竜の歯の大きな特徴は、歯の横断面がD字型をしていることです(図5)。この歯の形は肉を噛(か)みちぎることに適しており、普通なら折れてしまうほど強い衝撃が加わったとしても、耐えるほど頑丈です。また、歯の後緑には上下に伸びた筋が見られ、鋸歯(きょし)と呼ばれる小さなギザギザがあります。これはノコギリやステーキナイフのものと同じ役目をしており、肉をえぐり、肉の繊維を切り裂(さ)くのに適しています。

図 2 アルパートサウルス

図 2 アルパートサウルス

図 3 ダスプレ卜サウルス

図 3 ダスプレ卜サウルス

 

図 4 チラノサウルス

図 4 チラノサウルス

図 5 アルパートサウルスの歯の横断面

図 5 アルパートサウルスの歯の横断面

 

チラノサウルスの大きな頭骨にはこのような鋭く尖(とが)った歯が大小約60本も並んでおり、きっと、チラノサウルスはこの鋭い歯で獲物に食らいつき、その肉を食べていたのでしょう。

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